脱炭素技術として期待の「CO2回収・貯留」、コストは1案件で1兆円超のケースも法制度・規制(1/3 ページ)

カーボンニュートラルに貢献する次世代の技術として期待されているCO2回収・貯留技術(CCS)。CCSの導入を検討する政府の委員会で、現状および将来のコストに関する情報が公開された。

» 2022年12月12日 08時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラル実現に向けては、まずは省エネや再エネ等の非化石電源の最大限の導入が進められる。それでも排出されるCO2に関しては、これを大気中から除去するネガティブエミッション技術が不可欠とされており、その1つがCCS(CO2回収・貯留技術)である。

 「第6次エネルギー基本計画」では、国は事業者等と共同でCCSの技術的確立やコスト低減、適地開発や事業化に向けた環境整備を進めることとしており、2022年5月に「CCS 長期ロードマップ」の中間とりまとめが公表された。

 その後、資源エネルギー庁は「CCS 長期ロードマップ検討会」の下に「CCS 事業・国内法検討ワーキンググループ」と「CCS 事業コスト・実施スキーム検討ワーキンググループ」を設置し、CCS事業に関する国内法整備や将来のコスト目標等に関してさらに具体的な検討を行ってきた。

CCSの想定年間貯留量

 第6次エネルギー基本計画の検討段階においては、2050年の発電電力量の約1割に相当する量を化石燃料火力発電+CCUSで対応する場合、年間約1億トンのCO2を回収することが想定されていた。

 これに対してCCS長期ロードマップ検討会では、IEA(国際エネルギー機関)の試算に基づき、日本のCCS想定貯留量は、2050年時点で年間約1.2〜2.4億トンと試算している。

 これは目標値ではなく、あくまで「目安」という位置付け仮に直線的にCCS貯留量を増加させる場合、2050年までの国内累計貯留量は、12億〜24億トンに上る。

図1.国内のCCS普及イメージ 出所:CCS長期ロードマップ検討会

 この貯留量を実現するためは、圧入井1本あたりのCO2貯留可能量が年間50万トンの場合、全国で240〜480本の圧入井が必要となる。なお現在の油井・ガス井の本数は、日本全体で約200本にすぎない。

 2030年から2050年に向けて、仮に直線的に圧入井を増加させる場合、毎年新たに12本〜24本ずつ圧入井を増やす必要がある。試掘に掛かる費用は陸域で約50億円/本、海域で約80億円/本と想定されている。

 2030年中に商用CCS事業を開始するためには、2023年度からFS等を開始し、2026年度までに最終投資判断をする必要がある。

 なおRITE(地球環境産業技術研究機構)では、2050年カーボンニュートラルに向けたシナリオ分析の中で、国内での貯留9100万トン/年のほか、海外での貯留2.3億トン/年を想定している。

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