脱炭素技術として期待の「CO2回収・貯留」、コストは1案件で1兆円超のケースも法制度・規制(3/3 ページ)

» 2022年12月12日 08時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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CCSコスト低減の見込みは?

 CCS事業ではそのプロセスごとに、将来のコスト低減に向けた対策や目標が示されている。

 まず分離回収プロセスでは、カーボンリサイクル技術ロードマップ等に基づき、足元:4,000円/tCO2程度に対して、2030年:2,000円台/tCO2、2050年:1,000円/tCO2以下へのコストダウンを想定する。

 また輸送コストについては、輸送距離200〜300km以下ではパイプライン輸送がコスト的に有利であり、それ以遠では船舶輸送が有利となる。パイプラインと船舶のいずれも、大規模化によるコスト低減を仮定する。

 また貯留コストについては、年間圧入総量の大規模化と並び、圧入レートの向上(20万tCO2/年・本 → 50万tCO2/年・本)を見込むものとする。

 この結果、例えば「パイプライン20km輸送+陸域貯留」のケースでは、足元で12,800円/tCO2のコストが、2050年には8,000円/tCO2に低減すると試算される。

表3.CCS 2050年コスト低減の見込み 出所:RITE

 国内で排出されたCO2を海外に輸送し貯留する場合には、輸送費や貯留費が変動することになるが、現時点その試算は公表されていない。

 また、地下貯留を目的としてCO2を海外に輸出する際には、ロンドン条約96年ロンドン議定書との整合性が課題となるが、この検討状況については別稿に譲ることをご容赦願いたい。

CCS事業の採算性と経済的支援措置

 原油生産量の増加を目的としたEOR(Enhanced Oil Recovery)によるCO2の地下圧入は一定の収益を生み出す事業であるのに対して、大気からのCO2隔離を目的としたCCSでは、通常それ自体では収益を生み出さない点が難点とされる。このため諸外国でも、CCS事業に対して非常に高い補助率の政府支援が措置されている。

表4.CCS事業に対する他国政府の支援事例 出所:CCS事業コスト・実施スキーム検討WG

 またCCS事業はその環境価値をクレジット化することにより、直接的に収益を生み出すことも期待される。国の二国間クレジット制度(JCM)では、CCSを対象としたクレジットの創出が検討中である。

 また、ボランタリー・クレジット(民間イニシアティブによるクレジット)の分野では「CCS+」イニシアティブが立ち上げられ、CCS関連方法論の策定が進められている。

 表4のとおり、ノルウェーやオーストラリアの支援措置では、事業者に対してクレジットが付与(もしくは購入免除)される。オーストラリアの炭素クレジット(ACCU)価格は、現在30豪ドル(2,700円)/トン程度である。

 日本では今後、「成長志向型カーボンプライシング」として「炭素賦課金」と「排出量取引市場」の双方が導入予定である。

 CCS事業はこの負担を軽減(回避)することが可能であるという点では、カーボンプライシングはCCS事業推進の最大のインセンティブとなり得るものである。

 次回の「CCS 長期ロードマップ検討会」では、2つのWGでの検討を踏まえた、最終とりまとめが報告される予定である。

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