企業や産業の「グリーントランスフォーメーション(GX)」の実現に向け、政府が導入を検討している「カーボンプライシング」。その代表的な制度として炭素税や排出量取引制度などが挙げられるが、政府ではこれらを組み合わせた「成長志向型」のカーボンプライシング制度の導入を検討中だ。
カーボンニュートラル目標を宣言する国や地域は154、そのGDP総計は世界全体の約90%を占めており、GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた取り組みの成否が、企業や国の競争力に直結する時代に突入している。
日本政府は、今後10年間に150兆円超の官民GX投資を実現することを宣言しているが、これをさらに加速化させるために、第3回「GX実行会議」において、5つの政策イニシアティブが示された。岸田首相は、「成長志向型カーボンプライシング」の導入がこのイニシアティブの中核であると明言している。
一般的にカーボンプライシング(CP)には炭素税や排出量取引制度などがあるが、その制度設計にあたっては、対象や負担水準、導入時期などが論点となる。
GX実行会議ではCP制度として、「炭素に対する賦課金」と「排出量取引市場」の双方を組み合わせるハイブリッド型とする方針が示されている。
またCPの負担水準や導入時期に関しては、「エネルギーに係る公的負担の総額を中長期的に増やさない」ことを基本的考え方としている。
エネルギー関連税制には石油石炭税やFIT再エネ賦課金などがあるが、これらは今後、GXの進展により、負担総額が減少していくことが想定されるため、新たなCPの負担をこの範囲内に留めるという考え方である。
またCPの導入時期としては、日本企業の国際競争力への影響を踏まえ、代替技術の開発などのGXに取り組む猶予期間を設けることとする。
このようにCPを最初は低い負担で導入するものの、徐々に引き上げていくことをあらかじめ示すことにより、企業によるGX投資の自主的な前倒しを期待している。
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