温室効果ガス排出量の算定ルールが見直しに、改正温対法を受けた新案を公表法制度・規制(1/4 ページ)

温対法に基づき、温室効果ガス(GHG)を一定量以上排出する事業者に対して、自らの排出量の算定と国への報告を義務付ける「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)」。2006年の制度開始からその算定方法はほとんど変更されてこなかったが、このほど各種算定方法の基準やルールについて、大きな見直しが実施される予定だ。

» 2022年12月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」は、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づき、GHGを一定量以上排出する事業者に対して、自らの排出量の算定と国への報告を義務付ける制度である。そのローマ字頭文字を取り、「SHK制度」と略称される。

 事業者が自社の排出量を把握することにより自主的削減努力を促すことや、情報の公表・可視化による国民気運の醸成などを目的としている。

図1.SHK制度の算定から報告、公表の流れ 出所:SHK制度算定方法検討会

 しかしながら本制度は、2006年の制度開始以来ほとんど算定方法の見直しがされておらず、算定対象活動や排出係数が事業者の排出実態に必ずしも即したものになっていないことが課題として指摘されていた。

 そこで国際的なGHG算定ルールの動向への対応や、2050年カーボンニュートラルに向けた事業者の自主的取り組みを促進することを目的として、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会」が設置され、SHK制度の見直しに関する中間取りまとめ案が公表された。

SHK制度の概要

 SHK制度の算定対象ガスは、「UNFCCC(国連気候変動枠組条約)インベントリ報告ガイドライン」に基づき、CO2(ただし、エネルギー起源と非エネルギー起源に区分)のほか、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFC)、パーフルオロカーボン類(PFC)、六ふっ化硫黄(SF6)、三ふっ化窒素(NF3)が対象である。

 エネルギー起源CO2に関しては、自社での燃料の燃焼による直接排出が算定されるほか、他者から供給された電気または熱の使用に伴い排出されるCO2が間接排出として算定される。

 エネルギー起源CO2では事業者の算定・報告負担を軽減するため、省エネ法の枠組みを活用しており、全ての事業所の原油換算エネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者が、特定事業所排出者として定義される。

 SHK制度の対象となる特定排出者は13,525事業者に上り、国のGHG排出量の53%をカバーする大変網羅的な制度となっている。

 なお京都議定書第一約束期間の目標達成に向けて、京都メカニズムクレジットの取得を促進する観点から、2009年度以降、オフセットクレジットを用いた「調整後排出量」が導入され、「基礎排出量」と「調整後排出量」の二段構えの仕組みとなっている。

図2.「基礎排出量」と「調整後排出量」の違い 出所:SHK制度算定方法検討会
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