「改正省エネ法」の対応ポイントは“再エネの活用”、主要5業種のエネルギー転換目標が明らかにエネルギー管理(1/4 ページ)

2023年4月から施行される改正省エネ法。その改正内容は、非化石エネルギーやデマンドレスポンスの利活用を求めるなど、需要家側にエネルギー利用の高度化を促すものとなっている。2022年末に開催された政府の委員会で、改正省エネ法の制度運用の具体化が検討され、その取りまとめ案が示された。

» 2023年01月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 省エネ法が2022年5月に改正され、2023年4月の施行が予定されている。同法は従来、化石エネルギーの消費を減らすことが主目的であったが、今回の改正では、「エネルギーの定義」の変更を行うと同時に、非化石エネルギーの導入拡大やDR(デマンドレスポンス)の推進など、需要家側のエネルギー利用の高度化に向けた、抜本的な制度改正が行われている。

 2022年12月に開催された資源エネルギー庁の「省エネルギー小委員会 工場等判断基準ワーキンググループ(WG)」では、改正省エネ法の制度運用の具体化が検討され、その取りまとめ案が示された。

自然熱の取り扱い

 従来の省エネ法において、対象とする「エネルギー」とは「化石由来エネルギー(燃料、熱、電気)」のみであり、太陽光由来の電気やバイオマス、水素・アンモニアといった非化石エネルギーは「エネルギー」の定義に該当せず、使用の合理化の対象外となっていた。

 改正省エネ法では、非化石燃料や非化石電気を新たに「エネルギー」と位置付け、「使用の合理化」(つまり省エネ)の対象としている。

 ただし省エネ法では、一定の供給制約があるエネルギーについて使用の合理化を図る観点から、一部の「熱」はエネルギーに該当しないと政令で除外規定が設けられている。例えば、窓から差し込む日射熱や風通しとしての大気熱がこれに該当する。

図1.自然熱の類型例 出所:工場等判断基準WG

 また自然熱には図1のようにさまざまなものが存在するが、WGでは常温との温度差に着目してこれらを大別している。

 図1の左側にある「太陽熱・地熱・温泉熱・雪氷熱」は、常温と温度差が大きく、そのまま放置すると常温と一体化して利用価値が減っていくタイプの熱である。これを「一定の供給制約がある」ものと捉え、使用の合理化を図る改正省エネ法上の「エネルギー」と整理された。

 省エネ法上の「エネルギー」であれば、その使用量を算定し定期報告した上で、エネルギー消費原単位の改善等が求められることとなる。

 ただし「地熱・温泉熱・雪氷熱」については、計測のための機器購入や事務負担を考慮し、事業者による定期報告は任意とされた。

 他方、図1の右側にある「海水熱、河川水熱、地中熱、大気熱」等は、改正省エネ法上の「エネルギー」の対象外と整理され、エネルギー消費原単位の改善等は求められない。ただし自然エネルギーの利用促進の観点から、別途、定期報告の枠組みの中で「その他事業者が実施した措置」として報告できることとされた。

 なお、欧州ではヒートポンプによる大気熱利用を再エネ熱として評価している事例もあるため、海外の動向を注視する必要がある。

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