現行の省エネ法では、「電気需要の平準化」(ピークカット・ピークシフト)が求められていたのに対して、改正省エネ法では「電気の需要の最適化」が求められることとなる。
この一つが「電気需要最適化評価原単位」における評価である。再エネ出力抑制時にはMJ/kWh係数を低くすることで余剰電気の消費を促し、逆に需給逼迫時には係数を高く設定することにより、電気需要最適化に取り組むインセンティブとする。
第二の評価軸がDR(デマンドレスポンス)実績の評価であり、DRの実施回数等の報告に基づき、優良事業者を公表もしくは補助金での優遇等のインセンティブが付与される。DRにはさまざまなタイプのものが存在するが、約1万2000もの事業者が義務対象となる改正省エネ法では、まずはその取り組みの普及啓発や簡便な報告とすることが優先される。
このため改正省エネ法運用開始の初年度(2023年度)は、「上げDR」「下げDR」「需給調整市場でのDR」などのDRの種類を区別せず、DRを実施した「日数」をカウントし、報告(義務)を求めることとする。
ただし、需給逼迫時の「上げDR」や再エネ余剰時の「下げDR」といった逆向きのDRについては、電力安定供給に支障を生じるおそれがあり、「電気の需要の最適化」に反することから、カウント不可とする。
なお時間単位の電気使用量を把握している事業者については、より「高度なDRの実績」評価を行うため、今後、ベースラインの設定等の制度詳細を検討したうえで、2024年度から制度開始(任意報告)の予定である。
近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大に伴い、企業のエネルギー消費量やその内訳等の情報開示に対する要請も高まりつつあり、適切な情報開示は株価形成や資金調達コストの抑制に有効と考えられる。
例えば、非財務情報開示の国際基準である「GRIスタンダード」で求められる開示事項の幾つかは、省エネ法定期報告書に含まれる項目と重なっている。
このため今後は、公開に同意した事業者に限り、省エネ法定期報告書の一部情報を経済産業省ホームページ等で公開する予定としている。また、任意開示した企業へのインセンティブとして、補助金申請の際の加点等を行う予定としている。
任意開示を行うことに合意した場合、共通開示項目と選択開示項目の2区分が設けられる。
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