LPガス業界の取引適正化へ制度改革を検討、問題視されている商習慣とは?法制度・規制(1/4 ページ)

資源エネルギー庁が7年振りに「液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)」を開催。以前から指摘されている、いわゆる「無償貸与」「無償配管」といったLGガス業界特有の商慣行の適正化に向け、制度改革の検討を開始した。

» 2023年03月10日 10時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 LPガスは、全国の2200万世帯が利用する国民生活に密着したエネルギーの一つである。他方、これまでLPガス小売事業者に対しては、小売価格の不透明性や取引方法に対する問題点が指摘されてきており、資源エネルギー庁は「液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)」において2016年に報告書を取りまとめるなど、状況の改善を図ってきた。

 しかしながら、いわゆる「無償貸与」「無償配管」といった商慣行は現在も続いていることから、7年ぶりに液化石油ガス流通WGを開催し、制度改正を視野に入れた検討が再開された。

図1.家庭におけるLPガス需要家数の割合(2019年度) 出所:液化石油ガス流通WG

LPガス業界の現況

 LPガスの国内需要は、LPガス利用が多い地方での人口減少やガス給湯機等の省エネ化、オール電化住宅の普及等の要因により、減少傾向にある。

図2.LPガス国内需要の推移 出所:液化石油ガス流通WG

 LPガス(液化石油ガス)は、家庭用・業務用はプロパンを主成分としており、工業用・LP ガス車用はブタンを主成分としている。

 シェールオイル・シェールガスの産出により、近年は北米やカナダからの輸入が増加している。かつては中東諸国からの輸入が大半を占めていたため、輸入量の40日分(約109万トン)が民間備蓄として義務づけられ、国家備蓄も140万トン程度存在する。

図3.LPガスの輸入相手国 出所:液化石油ガス流通WG

 LPガスでは、事業者数が多いことが特徴であるが、近年LPガス事業者数は減少傾向にある。また、従業員が数名程度の小規模な事業者が大半を占めている。

 LPガスの販売は、「液化石油ガス法」(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)により規制されており、2つ以上の都道府県で事業を行おうとする場合は経済産業大臣の登録(1つの都道府県で事業を行う場合は都道府県知事の登録)を受けなければならない。

 またLPガスでは、1968年の液石法施行当初から料金等の供給条件の認可は課せられておらず、自由に料金を設定することが可能である。

 一般的にLPガス販売事業者は、充填所から需要家に対しシリンダー(ボンベ)等によりトラック輸送・供給するが、導管を通じて供給する場合であっても需要家数が70戸未満の場合は簡易ガス事業ではなくLPガス販売事業となる。

図4.LPガス事業者数の推移と規模別分布 出所:液化石油ガス流通WG
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