LPガス業界の取引適正化へ制度改革を検討、問題視されている商習慣とは?法制度・規制(3/4 ページ)

» 2023年03月10日 10時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

戸建住宅における「貸付配管(無償配管)」の問題

 LPガスの設備は、LPガス容器からLPガスメーター出口までの設備が「供給設備」であり、LPガスメーター出口から燃焼機器までの設備は「消費設備」と呼ばれる。図8のとおり、屋内等にある配管は消費設備に含まれ、管理責任は消費者側にある。

図8.LPガス設備の区分 出所:神奈川県LPガス協会

 LPガスの使用を予定する消費者が戸建住宅(一軒家)を新築する際には、通常、配管も同時に工事することになる。

 「貸付配管(無償配管)」とは、戸建住宅新築の際に、工務店・建設業者が、提携先のLPガス事業者に無償で屋内配管工事をさせる商慣行である。結果として、配管工事費は住宅建築費には含まれないこととなる。

 この場合、配管工事を行ったLPガス事業者が配管の所有権を持ち、住宅完成後は当該LPガス事業者が、LPガスを供給することとなる。

表1.建設業者・LPガス事業者・家主の関係 出所:液化石油ガス流通WG

 貸付配管(無償配管)は、かつては家主に告知されないままに、工務店・建設業者とLPガス事業者との間で行われており、これを知らない家主がLPガス事業者切り替えをしようとすると、突然、高額の配管工事費を請求するという行為があった。

 このような工事費請求は、LPガス業者の切り替え抑制につながり、LPガス事業者間の競争を制限するおそれや、料金の不透明性の問題が生じるおそれがある。

 また他社への切替等による旧契約解約時の貸付配管費用の精算について、家主側が支払いを拒否することがあり、多数の訴訟事件が発生している。これまで判例の多くでは、配管は物理的・機能的に建物と強く付合しているため、建物所有者が配管の所有者であると判断されており、LPガス事業者が負担した費用は、消費者ではなく、建設会社に請求すべきとの判決が示されている。

 仮にこのような過去の配管費用の精算が広がるならば、当事者である工務店・建設業者に大きな影響を及ぼすだけでなく、国土交通省においても一定の対処策が必要になると考えられる。

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