都市ガスのカーボンニュートラルの実現策として期待されている「バイオガス・バイオメタン」。現在の日本国内における利用状況と関連制度の、そして海外での利活用の状況についてまとめた。
都市ガスのカーボンニュートラル実現に向けて、バイオガス・バイオメタンのさらなる利用拡大が期待されている。
「バイオガス」とは、下水汚泥や生ごみ、家畜糞尿、エネルギー作物などのバイオマスに由来し、微生物によるメタン発酵により発生するガスである。バイオガス成分の約6割がメタン、約4割がCO2であり、少量のシロキサン等の不純物も含まれる。
このバイオガスからCO2等を分離除去して、メタンの純度を高めたもの(精製したガス)が「バイオメタン」である。ただし、ガス導管に注入して都市ガスとして利用するには、精製することが前提となるので、バイオメタンを特に区別せず、単にバイオガスと呼ぶことも多い。
精製されたバイオメタンは、LNGに由来するメタン(CH4)と同じものであるため、既存の都市ガスインフラ・ネットワークや需要家側設備をそのまま活用可能であり、追加的な社会コストを抑制可能である。
バイオメタン(CH4)も炭素を含むガスであるため、その燃焼時にはCO2を排出する。合成メタンではその環境価値(CO2排出の取扱い)が今も論点となっているが、バイオメタンは他のバイオマス利用と同じく、カーボンニュートラルな燃料であると整理されている。
エネルギー供給構造高度化法は、都市ガスの製造供給量が年間900億MJ以上の大手ガス事業者に対し、「余剰バイオガスの80%以上を利用すること」を目標として定めている。
現在これに該当する事業者は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスのみであり、3社のバイオガスの利用量実績(2021年度)は、合計80万m3程度である。これは、全国の都市ガス販売量約404億m3(2019年度)と比較すると、わずか0.002%であり、近年はバイオガス生産事業者による自家利用や発電利用の増加により、余剰バイオガス供給量(=利用量)の減少が続いている。
また、一部の地方ガス事業者は自主的取組として、バイオガスを都市ガス原料として利用している。
日本ガス(鹿児島市)の現在のバイオガス利用量は約150万m3/年であり、すでに大手3社の利用量を上回っているが、2050年には同社の家庭用需要の全量をバイオガスで賄う2,500万m3/年を目標としている。
都市ガス業界としては、合成メタンの製造・利用により脱炭素化を目指しているが、中小規模の地方ガス事業者が大規模なメタネーション製造プラントを設備することは困難である。このため、中小ガス事業者でも実現可能な地産地消の再エネメタンとして、バイオガスに対する注目が集まりつつある。
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