都市ガスの脱炭素化に役立つ「バイオガス・バイオメタン」、国内外の普及動向日本における利用状況は?(2/4 ページ)

» 2023年04月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

国内のバイオガス発生量の状況

 それでは現在、国内のバイオガス発生量はどれぐらいだろうか。まず、バイオガスの原料となる「バイオマス」の発生量は表2のとおりである。例えば家畜排せつ物の利用率は86%と高いが、その大半は堆肥や液肥としての利用であり、エネルギーとしての利用は限定的である。

表2.バイオマスの発生量(賦存量) 出所:農林水産省

 家畜排せつ物(牛ふん尿)はその処理方法の違いにより、温室効果ガス(GHG)排出量が大きく異なることが報告されている。よって、家畜排せつ物をバイオガス化することは、畜産分野におけるGHG排出量抑制の観点からも、非常に有効である。ただし、バイオガス化と同時に生成される液肥(消化液)の利用(農地への散布)は、北海道以外では限定的という課題がある。

図3.バイオガス化、堆肥化、簡易保管のGHG排出量 出所:家畜ふん尿の堆肥化・バイオガス化に伴う臭気及び温室効果ガス低減に関する考察

 また下水汚泥に由来するバイオガス発生量は、約3.7億m3と推計されており、この大半がすでに消化槽の加温やバイオガス発電の燃料として、有効利用されている。

図4.下水汚泥由来のバイオガス発生量と利用内訳(2021年度) 出所:ガス事業制度検討WG

 また、下水汚泥に含まれる有機物量のうち、エネルギー利用された割合は約27%(バイオガスは約16%)であり、残り73%はエネルギーとして未利用である。(2020年度)

 バイオマス活用推進基本計画では、2030 年に下水汚泥有機物の約50%の利用を目標としているが、これにはエネルギー利用だけでなく、農地利用も含まれる。家畜排せつ物や食品廃棄物等についても同じような状況であり、全般的に、バイオガス等によるエネルギー利用の実績や目標値が不明確である。

図5.下水道汚泥エネルギー化率(2020年度) 出所:国土交通省

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