都市ガスの脱炭素化に役立つ「バイオガス・バイオメタン」、国内外の普及動向日本における利用状況は?(3/4 ページ)

» 2023年04月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

温対法における算定報告公表制度の改正

 これまで温対法の算定報告公表制度では、電力と異なり、都市ガスの事業者別排出係数等の設定がなく、全社一律の係数(2.23 tCO2/1,000Nm3)であった。このため、都市ガス原料にバイオガスを利用しても排出係数に反映できず、バイオガスを利用するインセンティブが無い状態であった。

 これが制度改正により、2024年度の報告(2023年度実績)から事業者別・メニュー別係数が公表されることにより、今後はバイオガスの環境価値が適切に評価されることとなった。

海外におけるバイオガス・バイオメタンの利用

 バイオガス・バイオメタンの利用は海外でも拡大しており、IEA(国際エネルギー機関)によれば、世界のバイオメタン生産量は、ヨーロッパと北アメリカを中心として、2025年に100億m3に達する見通しとされている。

 欧州の現在のバイオメタン生産量は30億m3、バイオガス生産量は170億m3であるが、天然ガスのロシア依存解消のため、「REPowerEU」計画を策定し、従前のGHG削減計画「Fit for 55」と合わせて、2030年までに350億m3のバイオメタンを生産する目標を掲げている。これは日本全体の都市ガス販売量約400億m3に匹敵する規模である。

フランスの「バイオガス版FIT」

 フランスは、「Energy Transition for Green Growth Act」により、2030年にガス消費量の最大10%をバイオガスにする目標を掲げている。

 フランスではバイオメタン促進のため、ガスネットワークに注入するバイオメタンを対象とする固定価格買取制度が、2011年から施行されている。バイオメタンの購入価格は、設備の特性に基づく価格(最大生産容量・原料の組成・接続されるネットワークが供給する顧客数等により決定)と購入価格レート(国内の累積導入容量等により決定)から計算され、最大で145ユーロ/MWh(高位発熱量ベース)となる。

 バイオメタンの生産者は、ガス供給事業者と15年間のバイオメタンの購入契約を締結できる。

図6.フランスのバイオガス版FITの購入価格 出所:ガス事業制度検討WG

 また英国においてもバイオメタンの導管注入支援制度として、2021年11月から4年間の措置として、「Green Gas Support Scheme」が開始されている。本スキームに参加するバイオメタン供給者は、15年間、導管注入量に応じた支払いを受けることが可能である。

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