2026年度から低圧リソースも需給調整市場に参画へ、押さえておきたい制度の概要法制度・規制(1/3 ページ)

分散型リソースのさらなる活用促進に向けて、2026年度から需給調整市場に家庭用蓄電池などの低圧リソースを本格的に活用できるようにする方針が固まった。現時点で決まっている制度の詳細やポイントを紹介する。

» 2023年08月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルの達成に向けては、太陽光発電や蓄電池等の分散型リソースの価値を最大限活用し、安定した電力システムを構築していくことが重要な課題とされている。

 家庭用蓄電池等の低圧リソースは、太陽光発電の自家消費や小売電気事業者による経済DRなどにおいて現在も一定の活用がされているものの、需給調整市場へ参加することは認められていない。また、需給調整市場に需要家側リソースが参加する場合、現行ルールでは「受電点」計測が求められているが、「機器個別」計測を適用することにより、さらなるポテンシャルの発揮が可能と考えられる。

 このため、資源エネルギー庁では2022年11月に「次世代の分散型電力システムに関する検討会」を設置し、2023年3月の「中間とりまとめ」においては、2026年度から低圧リソースの需給調整市場参加および機器個別計測の適用を開始することとした。このスケジュールを前提として、制度の詳細設計やシステム対応が進められている。

需給調整市場における機器個別計測の活用

 現行制度では、発電リソースは発電BG(バランシンググループ)に、需要リソースは需要BGに所属しており、需給調整市場を介して調整力を提供する場合、以下の2つを調整力としてカウントすることとなっている。

  • 発電リソース:調整電源BGを組成し、発電計画との差分を調整力としてカウント
  • 需要リソース:需要家リスト・パターンごとに「基準値」を設定し、それとの差分

 蓄電池等の分散型リソースは「受電点」計測でのDRとして需給調整市場に参加可能であるものの、需要規模に対してリソースのDR量が相対的に小さい場合、需要変動の影響を大きく受けるため、機器個別計測(機器点計量)の活用が検討されてきた。

図1.機器個別計測のイメージ 課題と効果 出典:『関西VPPプロジェクト』 R2年度実証結果と今後の取組み

 機器個別計測の対象となるリソース(高圧含む)は、自家発や蓄電池(EV)、生産設備等の需要負荷が考えられ、ユースケースは図2のように分類される。

 このとき、自家発や蓄電池などの発電(放電)するリソースが、機器点からの発電量増加分(kWh)を調整力として供出する場合には、「二重取り」の防止の観点から、その調整力の量(kWh)相当分を「外部に供給力として販売」や「構内で自家消費」としては活用できないようにする必要がある。

 このため、受電点メーターで計測される計量値に対して、当該調整力の量(kWh)を何らかの形で「補正する概念」の導入が必要であると整理されている。

図2.機器個別計測のユースケース 出典:次世代の分散型電力システムに関する検討会

 なお、自家発等の発電量の自家消費については外部の電力系統を使っていないため、託送料金対象外と整理されており、この考えのもとでは、機器個別計測適用後も、自家消費分については(他の需要負荷も含めた)既存の接続供給契約の中で観念することが適切とされる。

 そこで、機器個別計測の対象となる機器点からの調整力供出分(図3の「20」)を把握するための契約「調整力契約」を、1需要場所ごとに設定し、その契約の中で調整力供出分を把握することとした。また、既存の他制度や実務への悪影響を避けるため、受電点計量値そのものの補正は行わないこととする。

図3.機器個別計測と託送関連契約の関係(発電・放電リソースの場合) 出典:次世代の分散型電力システムに関する検討会

 他方、需要家内の発電リソースからの発電量増加が調整力として供出された結果として、小売電気事業者は発電量増加分に相当する小売販売量が減少する。これに相当する便益を調整するため、アグリゲーターから小売電気事業者に対し「調整金(仮称)」を支払うことにより、「補正の概念」を反映することとした。

 なお、機器個別計測の対象が需要リソース(機器点でのネガワット)の場合は「補正」は不要であり、従来のネガワット調整金スキームを適用する。

 これにより、従来の受電点計量に機器点計量が加わることになるが、託送供給契約を新たに締結することは不要であるため、従来どおり「1需要場所・1引込・1(託送供給)契約・1計量」の原則は維持される。

図4.調整力契約方式における事業者の関係 出典:次世代の分散型電力システムに関する検討会
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