需給調整市場で揚水発電所からの応札はなぜ少ない? 対応策を検討へ第48回「需給調整市場検討小委員会」/第94回「制度検討作業部会」(3/4 ページ)

» 2024年07月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

揚水による⼀次・二次①応札リスクとその軽減策

 需給調整市場、特に⼀次・二次①において揚水機の応札が少ない理由としては、商品要件として電源の並列が必須であることが挙げられている。これを深掘りすると、週間断面では系統並列時の電源態勢の持替えが確約できないため、応札(落札)により得られるメリットよりも、アセスメント違反や「計画不一致」を起こすリスクのほうが大きいためと考えられる。

 よって、まずはこのようなリスクを軽減することにより、調整力提供者(BG)に一次・二次①及びこれらの複合商品への応札を促すことが可能となる。

 ⼀次・二次①への応札リスク軽減策としては、以下の2つの案が示されている。

  • 対応策1:調整力提供者(揚水発電)が最低出力等の供給力を準備できなかった場合、TSOが代替ΔkWを確保することによって、調整力必要量を充足させる方法
  • 対応策2:調整力提供者(揚水発電)が最低出力等の供給力を準備できたものの、運用できる状態(並列状態)にできなかった場合、TSOが並列し調整力必要量を充足させる方法
図7.⼀次・二次①応札リスクを軽減する2つの対応策 出典:需給調整市場検討小委員会

対応策1:「TSOが代替ΔkWを用意」における論点

 調整力提供者(揚水発電)は、需給調整市場にΔkWを入札した場合、卸電力市場や相対取引等を活用し、最低出力等の供給力(ΔkW発動分を含む)を自ら確保することが原則である。

 対応策1では、前日12時に作成した前日BG計画において供給力を確保できないと判断した調整力提供者(揚水発電)は、前日15時までにTSOに対してΔkW代替確保を要請通知する。これは、TSOによる余力活用電源を用いた調整力確保は、前日15時から開始されるためである。

図8.対応策1の全体スケジュール 出典:需給調整市場検討小委員会

 また、ΔkWを供出できない電源はアセスメントIによりリクワイアメント未達成となり、1.5倍のペナルティ(調整力提供者は総額としてΔkW落札価格×0.5の支払いとなる)を課すことが原則である。

 今回の対応策1では、調整力提供者(揚水発電)に対するペナルティリスクを軽減するため、ペナルティを「1倍」に変更する。これにより、調整力提供者はΔkW落札価格の受け取りは無いものの、支払いも生じないこととなる。なお、この代替ΔkW費用は一般負担(託送料金支払者負担)となる。

 また、調整力提供者(揚水発電)からTSOに代替ΔkW要請が通知された時点で、ΔkW費用を支払わないことが確定するため、アセスメントの実施も不要となる。

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