本来、需給調整市場で募集するはずであった調整力の一部を揚水公募等で賄う場合、シンプルな案(案1)としては、揚水公募量を市場の募集量から「一律控除」することが考えられるが、揚水発電機の運用実態を踏まえる必要がある。
需給調整市場では、週間取引で一次〜三次①を、前日取引で三次②を調達しており、揚水発電機はこれらいずれの調整力も供出可能である。ただし、揚水発電機の各モード(発電・停止・ポンプ・定期点検中)において、供出可能な調整力の種類や量は異なる。
また、揚水発電機は1日24時間の中で、火力等の他電源と組み合わせて運用することにより、どのモードとなるかが変わるため、時間帯によって供出可能な調整力の種類や量が変わることとなる。よって、定期点検中などにより調整力供出ができない一部の時間帯については、余力活用電源(火力)による補完が生じ得る。ただしこれは、需給調整市場の応札不足により余力活用電源の追加起動が常態化している現状と大差はなく、当面は「一律控除」という案1が現実的な選択肢となる。
第2の案として、公募調達した揚水機の調整力供出可能量を、TSO自身が需給調整市場に応札する方法があり、これは透明性と公平性を保ちながら、市場調達と揚水公募等の共存が可能になるといったメリットがある。ただし、上池運用を踏まえた週間断面での市場入札はTSOにおいても難しいものであり、結局、リスクを考慮して入札量が少なくなると考えられるため、現実的には2026年度(週間取引の前日取引化)以降の選択肢となる。
揚水発電機は蓄電リソースであるため、発電によるΔkW供出を行うためには、充電に相当するポンプアップを行う原資を調達する必要がある。
ポンプアップ原資の確保方法には、「案1:上げ調整力で対応(全国の起動済電源の余力)」「案2:上げ調整力で対応(エリア内の起動済電源の余力)」「案3:TSOが卸電力市場等で調達」の3つが考えられる。
このうち案1は、広域需給調整システムを利用するため、インバランス料金に影響を与えるといった問題を抱えているのに対して、案2はエリア内の差替となり、制度上の大きな課題はないといった違いがある。また案3のように、TSOが直接JEPXで取引を行うには、その取引条件や建付けを事前に整理する必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10