需給調整市場で揚水発電所からの応札はなぜ少ない? 対応策を検討へ第48回「需給調整市場検討小委員会」/第94回「制度検討作業部会」(1/4 ページ)

需給調整市における課題の一つとして、揚水発電所からの応札の少なさが指摘されている。政府の制度検討作業部会で、需給調整市場における揚水発電の応札拡大方策や、揚水発電の公募調達について検討が行われた。

» 2024年07月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 需給調整市場において、2024年度から新たに一次調整力・二次調整力①・二次調整力②の取引が開始され、優れた調整能力を持つ揚水発電についても多くの応札が期待されていた。ところが、大半のエリアでは揚水発電による応札は少なく、高速商品である一次・二次①に対する応札は特に少ない状況となっている。

図1.需給調整市場 約定リソースの内訳(2024年5月)(百万ΔkW・h) 出典:制度検討作業部会を基に筆者作成

 揚水発電所からの応札量が少ない理由としては、揚水発電のビジネスモデルの変化や、需給調整市場の商品要件による制約など、さまざまな理由が指摘されている。

 そこで、広域機関の需給調整市場検討小委員会や、資源エネルギー庁の制度検討作業部会では、需給調整市場における揚水発電の応札拡大方策のほか、揚水発電の公募調達について検討が行われた。

揚水発電のビジネスモデルの変化

 2023年度以前、揚水発電の調整力については、一般送配電事業者(TSO)がポンプアップ(揚水)を行うエリアと、調整力提供者(発電・小売BG)がポンプアップを行うエリアの2タイプがあり、TSO運用揚水においては、調整力公募に伴う電源I・II契約に基づき、TSOが火力等の上げ調整力を用いて揚水のポンプアップ運転を行っていた。

図2.2023年度以前のTSO運用揚水 出典:需給調整市場検討小委員会

 2024年度から揚水発電所の運用主体がBGに統一されたことにより、発電事業者(BG)にとって揚水発電は、kWh単価が安価な時間帯で買電(上池にポンプアップ)し、kWh単価が高価な時間帯で売電することによって得る値差収益がそのビジネスモデルの中心となった。これ自体は、スポット市場kWh価格の安定化に資するものとして評価すべきである一方、BG運用揚水発電からのΔkW供出が限られる一因ともなっている。

揚水発電の公募調達等に関する検討

 そこで、この対策としてBGがTSOに対して一部揚水機の運用権を貸与し、必要な対価をBGに支払う契約を締結することで、TSOに揚水の運用主体を戻す仕組み(以下、「揚水公募等」と呼ぶ)の検討が開始された。需給調整市場と公募といった複数の調達先があることで、市場間の競争による価格の均衡や価格変動リスクの低減が期待されている。なお、揚水公募等を実施するか否かの選択、実施する場合の公募調達量はTSOの任意とされている。

図3.調整力調達手段多様化の効果(イメージ) 出典:需給調整市場検討小委員会

 揚水公募等を開始するにあたっては、その対価性、契約価格の在り方の検討が重要となる。

 まずkW価値については、2024年度から容量市場及びこれと連動したブラックスタート機能公募が開始されており、固定費の多くはこれらの市場と公募ですでに賄われていると考えられる。他方、BG運用揚水機が卸電力市場における値差取引に活用されていることを踏まえるならば、TSOに揚水機の運用権を貸与することに伴う、値差取引の逸失利益等(市場収入相当額)の補填についても検討が必要となる。

表1.揚水公募等における契約と対価性における論点 出典:需給調整市場検討小委員会

 また、V1(上げ調整)単価・V2(下げ調整)単価をどのように設定するかについては、池全体の水位(≒燃料)がBG・TSOのどちらに帰属するのかといった整理や、ユニット(発電所)単位で池容量を按分する(責任区分を明確化する)といった運用・精算の検討が必要になる。

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