日本企業の勝ち筋は? 種類別に考えるバイオ燃料の事業機会と展望バイオ燃料の社会普及に向けた将来展望(3)(1/3 ページ)

運輸分野における脱炭素化の切り札として期待されている「バイオ燃料」の動向について解説する本連載。最終回となる今回は、バイオ燃料の種別ごとに想定される日本企業の事業機会と、共通するキーポイントについて解説する。

» 2024年07月31日 07時00分 公開
[株式会社クニエスマートジャパン]

 エネルギー戦略における各国のバイオ燃料の位置付け、海外でのビジネス動向、日本におけるバイオ燃料の本格的な普及に向けた展望などを全3回にわたり解説する本連載。

 これまでの2回で、脱炭素エネルギーとしてのバイオ燃料の分類やその製造方法、社会に普及させる上での課題および諸外国の政策を含むビジネス動向を整理してきた。最終回となる今回は、日本企業の目線でバイオ燃料の種別ごとに想定される事業機会といずれにも共通するキーポイントについて解説する。

バイオ燃料の種別に見た今後の事業展望と日本企業の勝ち筋

 ビジネスは「需要と供給」があってこそ成立する。ESG経営の重要性が浸透している昨今において、バイオ燃料を利活用することは脱炭素への直接的な貢献につながるため、潜在的な需要は旺盛だ。

 しかし、ビジネスを行う上で最も重要なファクターの一つであるコストが高く、それが需要の喚起を妨げている。供給側としては潜在的な需要の大きさを理解してはいるものの、そもそも技術開発が追い付いていないことや、安価な原料を安定的に調達するためのサプライチェーンを新たに構築する必要があることなどから、コストを下げるための大規模生産を一足飛びに実現することは難しいのが現状だ。

 上場企業の場合、株主から短期的な利益の追求を求められる傾向にあるため、長期的な視点が必要なバイオ燃料ビジネスへの大胆な投資はなおさら難しいだろう。これらの需要と供給の関係性から、民間企業の努力だけではバイオ燃料の社会実装は難しい。そこで、各国政府は本連載の第2回でも取り上げたように、さまざまなルール作りや補助金の付与を行っている。

 日本政府も同様の方針を取っており、2023年2月発表のGX実現に向けた基本方針ではSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の製造技術開発、大規模実証、製造設備等への官民投資に今後10年程度で約1兆円投資する計画が明らかにされた。また、2021年に策定された新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金では、SAFなどのバイオ燃料に限定してはいないが、カーボンニュートラル関連の重点項目に対して総額2兆円を超える助成金の付与が決まっている。これまでにSAFを製造するための技術開発に、約300億円の支援などが予定されている。

 日本政府としては主にこの2つの支援によりバイオ燃料の社会実装を後押ししている。このように各国政策を追い風に、バイオ燃料の市場規模は段階的に大きくなると考えられる。では、このような大枠の背景がある中で、日本企業はどのようにしてバイオ燃料ビジネスに参入すべきなのか、どのような“工夫”ができるのか。その参考となるよう、バイオ燃料の種別ごとに今後の事業機会を解説したい。

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