再エネの大量導入や出力制御の増加など、今後さらなる変化が予想される国内の電力系統。安定的な電力供給を実現するために定められている、地域間連系線及び地内送電線の「運用容量」は今後どうなるのか。電力広域的運営推進機関は専門の作業部会を新設し、将来に向けた検討を開始した。
発電所等で発電された電力は、送配電設備等の電力系統を介して、需要家(=負荷)へ送電される。一般送配電事業者等は、一部の送電設備が故障した際にも供給支障や設備寿命への影響を最小限に留めるため、4つの制約要因(熱容量、同期安定性、電圧安定性、周波数維持)の全てを満たす限界潮流値を、地域間連系線及び地内送電線の「運用容量」として定めている。
今後の再エネ電源大量導入を見据えると、需給制約による出力制御だけでなく、地内系統混雑(基幹系・ローカル系の運用容量超過)による出力制御の増加も課題になると考えられる。
また、地域間連系線及び地内送電線の運用容量の値や考え方は、需給調整市場における調整力の広域的な調達・運用や、将来の同時市場において、電源の起動・出力配分ひいては事業者収支に直結するものとなる。
他方、運用容量の算出に使用する「系統特性定数(周波数が1Hz低下する電源脱落率)」にも前提条件の変化があり、安定供給の観点からも見直しの検討が必要とされている。
これらの課題を踏まえ、電力広域的運営推進機関は「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」を設置し、透明性の担保を前提とした運用容量等の在り方について検討を開始した。
連系線等の運用容量は、一定のリスクを考慮し、「通常想定し得る故障」が発生した場合でも、電力系統を安定的に運用するものとして算出している。送配電等業務指針において、通常想定し得る故障とは、電力設備の単一故障(以下、N-1故障)および電力設備の2カ所の同時喪失を伴う故障(以下、N-2故障)と定義しており、N-1故障では原則、供給・発電支障を許容せず、N-2故障では供給・発電支障は許容するが、社会的影響が大きい場合は別途対策を検討することとしている。
例えば連系線において、送電線や変圧器等の流通設備のN-1故障(送電線1回線故障、変圧器1台故障)が発生した場合、その設備に流れていた潮流が、残った健全回線に加わる(回り込む)こととなるため、送電線では電線の伸び(ゆるみ)や熱疲労による素線切れ、変圧器では絶縁物の劣化による寿命損失が発生する。
潮流が一定時間以上限度値を超えると、保護機能により流通設備が停止するため、これが次なる「回り込み」を招き、さらなる連鎖的な送電線停止が発生し、大規模停電に至る可能性もある。
このため一般送配電事業者は、設備耐用年数にわたり常時流し続けることができる限界潮流を常時熱容量(100%)として設定し、運用することが原則となる。なお、系統切替等により速やかに設備の過負荷を解消できる場合には、常時熱容量の150%に相当する短時間(10分程度)熱容量を採用するケースもある。
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