再エネ大量導入の時代、地域間連系線・地内送電線の運用容量はどうなるのか?第1回「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」(2/4 ページ)

» 2024年07月31日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

熱容量制約を拡大するための方策

 熱容量制約を拡大するためには、送電線の太線化・耐熱化や、変圧器の大容量化といった設備増強のほか、変圧器の増設や送電線の多ルート化により、回り込み潮流を軽減することが有効である。

 また、健全回線へ回り込む潮流の総量を抑制する手段として、発電機の出力を瞬時に抑制する「電源制限」、すなわちN-1電制も実施されている。N-1電制を行うことにより、N-1故障時に残回線の設備容量を超過することが無くなるため、平常時には熱容量100%(2回線で200%)を使用可能となる。

図3.N-1電制適用後の運用イメージ 出典:将来の運用容量等在り方作業会

 また、電気抵抗により生じた送電線や変圧器の熱は、寒冷な外気温や風により、一定の冷却効果が期待される。このため、気温や風速、電線温度や弛度をセンサー等で実測し、動的に熱容量制約を解析する「ダイナミックレーティング」技術を採用することにより、柔軟に熱容量を拡大することが可能となり、現在、実証試験等が行われている。

運用容量の制約要因2:同期安定性

 現在、電力系統に連系する発電機の多くは同期発電機であり、全ての同期発電機は同期状態で運転している(図4の左図)。

 系統事故などの何らかの擾乱(かくらん)により「脱調」(同期はずれ)状態となった場合、発電機が故障するおそれがあるため、発電機は自動的に停止(系統から解列)されることとなる。一つの同期発電機の脱調(同期はずれ)は、他の発電機の連鎖的な脱調を招くおそれもあり、数百ミリ秒単位で、大規模な電源脱落が生じる可能性もある。

図4.同期安定性とN-1故障のイメージ 出典:将来の運用容量等在り方作業会

 よって電力設備に流れる潮流は、N-1故障時に同期発電機が脱調することなく同期運転を安定的に継続できる潮流以内とする必要があるため、この限界潮流を同期安定性制約として設定している。

 同期安定性を高める方策として、発電機と負荷の間の電気的距離(インピーダンス)を低減することが有効であることから、送電線の太線化や変圧器の増設、直列コンデンサ(SrC)の設置等が行われている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR