産業界の中でもCO2排出量の削減ハードルが高いとされる鉄鋼業界。さまざまな企業が低炭素な「グリーン鉄」の製造を進めているが、課題となるのがその市場創出だ。経産省が主催する「GX推進のためのグリーン鉄研究会」では、需要家への情報発信の在り方や、市場拡大に向けた課題について検討を開始した。
日本の鉄鋼業のCO2排出量(2022年度)は134百万トンであり、産業部門CO2排出量の38%、国全体のCO2排出量の13%を占めている。日本鉄鋼連盟では、カーボンニュートラル行動計画において「2030年度のエネルギー起源CO2排出量(総量)を2013年度比30%削減」を掲げるとともに、2050年に向けてはカーボンニュートラル基本方針を策定している。
代表的な粗鋼製造法である高炉法では、プロセス由来のCO2発生が不可避であるため、CO2排出削減が困難な産業(hard to abate)の一つと考えられており、鉄鋼の脱炭素化のためには、抜本的な製法の改革が必要とされている。
国のGX分野別投資戦略において鉄鋼では、大型革新電炉や直接還元等による高付加価値鋼板製造のGX価値(削減価値)を訴求することで「グリーン鉄」(グリーンスチール)の市場投入を拡大し、2030年をめどにグリーン鉄を1,000万トン供給することを目標としている(※2022年度鉄鋼生産量は約7,500万トン)。
現在、国内外の鉄鋼メーカーが、さまざまな定義や製法に基づくグリーン鉄の製造販売を開始しており、需要家がグリーン鉄を購入することにより、鉄鋼メーカーの脱炭素化投資が進むと期待される。グリーン鉄の市場拡大のためには、グリーン鉄の特徴や利用の意義について適切に情報発信を行い、需要家がグリーン鉄を選択することを奨励、促進していくことが重要と考えられる。
このため経済産業省は、「GX推進のためのグリーン鉄研究会」を設置し、需要家への情報発信の在り方や、市場拡大に向けた課題について検討を開始した。
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