2040年に温室効果ガスを73%削減――日本の新たな削減目標案の策定背景(1/4 ページ)

政府が新たな「地球温暖化対策計画」案及び「政府実行計画」の改定案を公表。国連に提出する日本の「NDC(国が決定する貢献)」における温室効果ガスの削減目標として、2035年に2013年度比60%、2040年に同73%とする新たな目標値を設定した。

» 2025年01月09日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 国は、2050年カーボンニュートラル、2030年度の温室効果ガス(GHG)46%削減(2013年度比)を目指し、2021年10月には「地球温暖化対策計画」を改正し、「日本のNDC(国が決定する貢献)」を国連に提出した。

 「地球温暖化対策の推進に関する法律」(地球温暖化対策推進法)では、少なくとも3年ごとに、地球温暖化対策計画に定められた目標及び施策について検討を行い、必要に応じて改正することを求めている。またパリ協定では、2025年に2035年目標、2030年に2040年目標を含むNDCの提出が奨励されており、次期NDCについては2025年2月までに提出することが求められている。

 このため国は、環境省中央環境審議会・経済産業省産業構造審議会の合同会合を設置し、2035年・2040年目標やその実現に向けた施策の検討を行った。2030年度46%削減を経て2050年ネットゼロ達成という目標はすでに決定しているため、その途中である2035年・2040年にどのような経路(①上に凸・②直線・③下に凸)に沿った削減目標とするかが主な論点となった。

図1.2030年度46%削減から2050年ネットゼロへの3つの経路 出典:中環審・産構審合同会合

 なお、COP28等において、1.5℃目標の達成が求められていることを踏まえ、①②③いずれの経路であっても、これと整合的であることが大前提とされている。

 中環審・産構審は、計9回の合同会合を経て、新たな「地球温暖化対策計画」案及び「政府実行計画」の改定案を作成した。

日本及び世界各国のGHG排出削減の現状

 IPCC第6次評価報告書では、温暖化を1.5℃に抑えるには、世界全体のGHG排出量を2025年までにピークアウトし、2019年比で2030年までに43%削減、2035年までに60%削減し、2050年までにCO2排出量を正味ゼロにする必要があることが述べられている。

 日本の2022年度のGHG排出・吸収量は、基準年2013年度比22.9%減少の約10億8,500万トン(CO2換算)となり、過去最小値を記録し、2050年ネットゼロに向けたオントラックを継続している(図1参照)。

 しかしながら現時点、世界の多くの国や地域では、GHG削減が必ずしも順調とは言えず、各国の2030年NDC達成には大きなギャップが残されている。

図2.米国・EUのGHG削減状況 出典:中環審・産構審合同会合
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