合同会合では、2040年削減目標の検討に際して、国立環境研究所及び地球環境産業技術研究機構(RITE)によるモデル分析を参考情報として用いることとした。これらの最適化型モデルは、エネルギーの輸出入の量・価格の整合性を保ちながら世界全体を評価でき、分析者の恣意性は入りにくいという特徴を持つ。以下では主に、RITEによる分析結果を報告する。
まず、RITEのモデル分析の前提条件としては、以下の3点を前提としている。
ただし、IPCCの1.5℃シナリオには「C1:オーバーシュートしない又はオーバーシュートは限定的」、「C2:オーバーシュート有り」があり、本分析シナリオはその中間的なものとなっている。
RITEのモデル分析では、表2で示した2つのシナリオを設定しており、「成長実現シナリオ」は、再エネやCCUS、製鉄など幅広く技術開発・コスト低下が進み、再エネの地域共生の制約が弱いことなどを想定した楽観的なシナリオであり、「低成長シナリオ」はその逆の前提条件としている。
これらの前提条件をもとに、2040年の世界各国のCO2限界削減費用を比較したものが表3である。先述の2050年ネットゼロへの経路(①上に凸・②直線・③下に凸)がそれぞれ、日本の2040年削減率①▲60%、②▲73%、③▲80%に対応している。
表3において▲60%の場合、CO2限界削減費用は世界各国間でほぼ均等化する結果となっており、世界全体での効率的な排出削減水準となっている。
モデル分析では、経済的効率性だけでなく、脱炭素化の実効性・カーボンリーケージ防止の観点から、限界削減費用の均等化を重視している。例えば、炭素強度の低い鉄鋼を生産するA国と炭素強度の高い鉄鋼を生産するB国がある場合、世界全体の鉄鋼消費量が変わらないと仮定すると、A国の生産減少(輸出減少もしくは輸入増加)・B国の生産増加(輸出増加もしくは輸入減少)は、世界全体ではCO2排出量の増加を招くおそれがある。
他方、公平性の観点や応能負担の原則から先進国の責任として、日本の2040年削減率目標を他国よりも野心的なものとすることは重要である。仮に削減率を▲73%や▲80%とする場合、日本の限界削減費用は他国よりも高くなり、他国と比べ、名実ともに野心的な削減目標と表現できる。
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