以上のモデル分析等を参考として、合同会合では次期NDCの削減目標として、2050年ネットゼロに向けて直線的に排出削減を進め、2035年▲60%、2040年▲73%とする目標案を作成した。図3のピンク色の網掛け部分が、IPCCの1.5℃目標と整合的な水準の幅を表しており、削減目標はこの範囲に収まるものとなっている。
具体的なGHG排出削減・吸収量の目標・目安は、表7の通りである。(※HFCs、PFCs、SF6、NF3の4種類のGHGについては暦年値)なお、森林吸収量の増加は、算定方法の変更(精緻化による改善)によるものである。
新たな計画において国は、二国間クレジット制度(JCM)による排出削減・吸収量を2040年度までに官民連携で、累積2億t-CO2程度へと倍増させる目標を掲げている。JCMクレジットの一部は日本のNDC達成にカウントし、残るクレジットはJCMパートナー国のNDC達成にカウントされる。具体的なクレジット配分比率は事業により異なるが、仮に平均50%とする場合、日本の排出・吸収量の外数として、1億トンが日本の貢献により削減・吸収されることの意義は大きいと考えられる。
現行の「政府実行計画」(政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の削減等のため実行すべき措置について定める計画)では、2030年度50%削減(2013年度比)を目標としているが、地球温暖化対策計画の見直しを踏まえ、2035年度に65%削減、2040年度に79%削減(いずれも2013年度比)の新たな目標を設定することとした。
この達成に向けて、2030年度までに設置可能な政府保有の建築物(敷地含む)の約50%以上に太陽光発電設備を設置し、2040年度までに100%設置を目指すこととした。また、ペロブスカイト太陽電池を率先導入し、その具体的な導入目標量については今後検討する。
次期NDC達成に向けては、エネルギー基本計画及び「GX2040ビジョン」と一体的に、以下のような対策・施策を実施していく。
産業部門における2022年度のエネルギー起源CO2排出量は3億5,200万t-CO2であり、2040年に向けては、徹底した省エネの推進に加え、熱需要や製造プロセスそのものの転換が必要となる。このため、省エネ法のトップランナー制度やベンチマーク制度の強化を進めるほか、排出量取引制度や化石燃料賦課金を含む「成長志向型カーボンプライシング」を順次進めていく。
また、業務部門や家庭部門では、建築物省エネ法などの規制と支援措置を一体的に活用しながら、建築物・住宅の省エネ性能を改善していく。運輸部門の自動車については、電動車の導入拡大や液体燃料の低炭素化・脱炭素化を進め、2050年までにライフサイクルを通じたCO2排出ゼロを目指す。
エネルギー転換部門では、再エネや原子力などの脱炭素効果の高い電源を最大限活用し、トランジション手段としてLNG火力を活用するとともに、水素・アンモニア、CCUS等を活用した火力の脱炭素化を進め、非効率な石炭火力のフェードアウトを促していく。
これらの施策により、エネルギー起源CO2全体で、2040年度に約360〜370百万t-CO2の排出削減量を見込む。
将来の電力需要や脱炭素技術の開発・実装の不確実性は大きいが、各省庁は毎年度、施策の進捗状況を確認し、地球温暖化対策推進本部等において、地球温暖化対策計画全体のフォローアップを行う。必要に応じて、施策の強化や項目の入れ替え等の見直しを柔軟に進め、フォローアップの改善を図っていく。
第7次エネルギー基本計画の原案が公開 2040年の電源構成は再エネが最大想定に
太陽光発電の最新コスト動向 新規導入の低迷を受け「初期投資支援」の検討も
2040年の発電コスト検証のとりまとめ 再エネは「統合コスト」も考慮へCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10