富士経済は2025年1月、全固体電池などの市場予測調査を公表。全固体電池の世界市場は、2045年までに足元の約300倍に相当する8.7兆円規模にまで拡大する見通しとしている。
調査会社の富士経済は2025年1月、全固体電池やナトリウムイオン二次電池などを中心とした次世代電池に関する調査レポートを発表した。それによると全固体電池の世界市場は、2045年までに足元の約300倍に相当する8.7兆円規模にまで拡大する見通しとしている。
全固体電池は難燃・不燃で安全性が高く、高電圧化やパッケージ簡素化による容量増加や、超急速充電へ対応できることなどから今後の開発および普及に大きな注目が集まっている。複数の種類がある全固体電池だが、現状は約99%を酸化物系、1%を高分子系が占め、硫化物系はわずかという状況だ。EV向けを中心に酸化物系が増加しており、2024年の市場規模は前年比4.0倍の1158億円としている。
2020年代後半からEV向けでの硫化物系の採用が本格化し、これが市場拡大をけん引する見通し。既存のリチウムイオン電池よりエネルギー密度が高いことや、量産化の体制が整うことで、ドローンや医療機器、IoTセンサーなどEV以外の用途に採用が広がることで、2045年の市場規模は2023年比299.2倍の8兆7065億円と予測した。
ナトリウムイオン二次電池は、既存のリチウムイオン電池と同様の構造でありながら、レアメタルフリーで資源リスクやコストの低減ができるメリットがある。2021年以降、開発に参入メーカーが増加しており、特に中国電池メーカーによるESSや小型EV、電動二輪車向けの生産が活発化し、市場は大幅に拡大している。2024年の市場規模は、前年比20倍の60億円を見込んでいる。
2020年代は、リチウムイオン電池を下回るコストと層状酸化物系やポリアニオン化合物系を使用した正極材料による性能向上を実現することで、鉛蓄電池やLFP採用リチウムイオン電池の代替が期待され、順調に市場は拡大する見通し。用途別では、ESSやバックアップ電源、小型EV、電動二輪車、電動工具を中心に普及が予想され、特に中国電池メーカーの取り組みが積極的で、GWh/年規模の生産体制強化が進んでいる。
2030年以降は、サプライチェーン強化を背景にインドや欧米でも市場が拡大すると予想。エネルギー密度200Wh/kg以上かつ鉛蓄電池並みのコストを達成し、産業用車両や一部三元系採用リチウムイオン電池との代替も始まるとみられ、2045年の市場は2023年比4491.0倍にあたる1兆3473億円に拡大するとしている。
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