転機を迎える間接送電権市場 新たに6つの地域間連系線で商品追加へ第1回「間接送電権の制度・在り方等に関する検討会」(1/4 ページ)

事業者間でエリアをまたぐ電力取引を行う際の値差リスクをヘッジすることを目的に導入された「間接送電権市場」。資源エネルギー庁とJEPXでは、新たに6つの地域間連系線を対象に商品を追加する方針だ。

» 2025年01月31日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 地域間連系線の運用において、2018年10月よりそれまでの「先着優先」ルールに替わり、「間接オークション」が導入された。これにより、事業者間でエリアをまたぐ電力取引を行う場合、それが相対契約であっても日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場を介することが必須となった。

 このとき、連系線混雑により市場分断が発生し、スポット市場約定価格がエリアによって異なる場合、当事者間の清算によって相対契約の価格を実現することができない。このため、エリア間の値差リスクをヘッジする仕組みとして、2019年4月に「間接送電権市場」が創設された。

表1.間接送電権市場の概要 出典:制度検討作業部会

 後述するように2025年度末には間接オークションの経過措置が終了予定であり、制度を取り巻く環境は大きく変わると考えられる。このため日本卸電力取引所(JEPX)と資源エネルギー庁は共同で「間接送電権の制度・在り方等に関する検討会」を設置し、間接送電権の活用状況などを踏まえた今後の制度の在り方について検討を開始した。

間接送電権の概要

 間接送電権とは、物理的に電気を送電する権利ではなく、JEPXスポット市場で取引を行った際に、エリア間の価格差を受け取る権利(又は支払う義務)である。

 取引条件により異なるが、図1の例の場合、発電事業者が間接送電権を保持するケース(図1下)では、エリア間値差がいくらになろうとも、発電事業者はあらかじめ収益を固定することが可能となる。よって、間接送電権はエリア間値差リスクのヘッジ手段の一つとなる。

 なお、間接送電権はJEPXが唯一の売り手であり、転売はできない。また、間接送電権は現物電気と一体のものと整理されているが、実際にはデリバティブ取引と判断されるとの指摘もある。

図1.間接送電権の利用によるエリア間値差のヘッジ 出典:地域間連系線の利用ルール等に関する検討会
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