そもそも間接送電権は、エリア間値差リスクのヘッジ手段であるため、市場分断が発生しやすく値差が大きくなりやすいエリア間で、多く活用されると考えられる。また、間接送電権の価格は、エリア間値差の期待値にその値差を固定する価値(固定化プレミアム)を加えた「期待効用」に次第に収斂(しゅうれん)していくことが合理的とされている。
間接送電権を開始した2019年度以降の売入札量と約定量は、図5のとおりである。JEPXによる間接送電権の発行量=売入札量は、地域間連系線の運用容量や経過措置量の違いを反映して連系線により異なるが、その約定率も連系線により大きく異なる。
先述の表1のとおり、間接送電権の売入札価格は0.01円/kWhであり、実質的に買入札量=約定量となるため(売入札量以下の場合)、東北→北海道や東京→中部間など一部の連系線・潮流方向では、間接送電権の買いニーズ自体が少ないことが分かる。
そこでエリア間値差の発生状況を図6で見てみると、東北→北海道はエリア間値差が小さく、ヘッジの必要性が小さい。また東京→中部間は値差がマイナス値であり、間接送電権を保持していると支払い(損失)が生じてしまう商品が多く、これが買入札量の少なさにつながっていると考えられる。
ただし、ヘッジニーズのある連系線であっても、多くの場合は実際のエリア間値差と比べ、間接送電権の約定価格が低くなる(割安となる)傾向があり、売入札価格(=最低約定価格)である0.01円/kWhで約定されるケースも多く生じている。
約定率が高く(ほぼ100%)、間接送電権のニーズが高いと考えられる中部→東京間や九州→中国間においても、間接送電権約定価格が割安(ディスカウント)状態であることから、応札者の買入札価格が低く、価格競争性が低いことがうかがえる。
なお、エリア間値差リスクに対するヘッジ手段は間接送電権だけでなく、相対取引や電力先物取引を活用することにより、同じ効果を得ることが可能であるため、これらの活用が間接送電権の利用率に影響を与えている可能性もある。また、デリバティブ会計の適用が求められることも、間接送電権購入のブレーキとなっているとの指摘もある。
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