転機を迎える間接送電権市場 新たに6つの地域間連系線で商品追加へ第1回「間接送電権の制度・在り方等に関する検討会」(4/4 ページ)

» 2025年01月31日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
前のページへ 1|2|3|4       

間接送電権市場における新たな商品の追加検討

 2019年当初、間接送電権の商品(連系線・潮流方向)を設定するに際しては、期待値差が0.01円/kWhを上回る蓋然性が高く、ある程度の取引量が見込まれる5連系線・6商品(北海道→東北(逆方向)、東京→中部(順・逆方向)、関西→四国(逆方向)、中国→四国(逆方向)、中国→九州(逆方向))を発行することとした(表2の右列)。

 2023年度におけるエリア間値差に基づき期待値差を算定すると、北海道→東北(順方向)、東北→東京(順方向)、中部→北陸(逆方向)、中部→関西(逆方向)、北陸→関西(逆方向)、関西→中国(逆方向)は期待値差が0.01円/kWhを上回っていることが確認された。

 ヘッジの選択肢を増やし、取り引きを活性化させる観点では全エリア・全方向に商品設定することが望ましいが、事務コスト負担の増加も考慮し、これらの6商品(連系線・潮流方向)を2026年度分から新たに追加することが提案された。

表2.各エリア間における期待値差の状況等(2023年度) 出典:間接送電権制度・在り方検討会

新たな商品形態と取引タイミング

 間接送電権においても、多種多様な商品設定によりさまざまなユーザーニーズを満たすことが理想ではあるが、システム開発コストの増大や、取引量の分散化が懸念される。そこで2019年の制度開始当初は、最も汎用的なベース的活用のニーズを満たす「24時間型」の「週間商品」のみが設定された。

 その後、2019年7月にはベースロード(BL)市場が開始されたが、BL市場はスポット市場を介して電気の受渡しを行っており、市場分断が発生した場合には同じく値差の影響を受けるため、実質的に固定価格での取り引きとならないことが課題として指摘されてきた。

図7.BL市場の清算の仕組み 出典:制度検討作業部会

 また現在、相対取引においても現物の長期取引の活用に向けた検討が進められている。よって、間接送電権においてもこれら長期取引に対するヘッジ手段として、新たに長期商品等の追加を検討することとした。ただし先述のとおり、間接送電権の発行量は連系線の空容量を上限としているため、新たに長期商品等を追加することに伴い、既存商品の発行量が減少することに留意が必要である。

 また連系線の空容量は工事等を行う際には減少するが、計画値と実際の利用可能量の差異を最小化することと、なるべく期先の取引を行いたいというニーズのバランスを考慮し、現在は実需給の2カ月前に入札を行っている。

 長期商品を導入する場合には、必然的に受渡の2カ月以上前に入札を行うこととなるため、空容量の変動の影響等を十分に考慮した上で、各商品の発行量を設定するなどの工夫が必要となる。

間接送電権取引の適正化に向けて

 間接送電権は現物電気と一体のものと整理されていることから、本来は個々のスポット取引とひも付けすることが望ましい。しかしながら現在は、取り引きの煩雑さを避けるため、間接送電権の利用者は、間接送電権の保有量の範囲内、かつ、スポット市場における電力取引の約定量の範囲内であれば、エリア間値差の清算を受けられることとしている。

 これにより、当該エリア間の相対取引等を行っていない(ヘッジニーズが無い)場合であっても、スポット市場で約定してさえいれば、「エリア間値差−間接送電権の約定価格」分の収益を得ることも可能となっている。間接送電権の売入札価格(=最低約定価格)が0.01円/kWhであることも、ヘッジ目的ではなく、収益目的で間接送電権を購入する動機の一つになっていると考えられている。

 このように、連系線の増強費用等に充てられるはずのJEPX混雑収入が、収益を目的とした事業者に流れることは適切ではなく、資源エネルギー庁はヘッジ手段という間接送電権の導入趣旨を踏まえた取り引きの適正化に向けた検討を開始した。

 2025年度末の間接オークションの経過措置終了に伴い、事業者間の価格競争が活性化することにより、取り引きの適正化が進む可能性もあるものの、資源エネルギー庁やJEPXでは、まずは間接送電権の制度趣旨や活用方法等の周知を進めるとともに、間接送電権の売入札価格の見直しについても検討する予定としている。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR