火力発電の休廃止などの影響により、国内の電力需給が変化している昨今。直近数年の供給信頼度の評価結果が目標値を超過するなど、その影響が出はじめている。そこで電力広域機関では、こうした供給信頼度評価の在り方や、その評価に影響する連系線運用容量の取り扱いの見直しについて検討を行った。
近年、火力発電等の休廃止が進むことにより、電力の需給バランスは相対的にタイトとなりつつある。
2024年度供給計画取りまとめにおいて、供給信頼度を年間EUE(Expected Unserved Energy=停電が発生する量を確率論的に評価する指標)とで評価した結果(表1)、北海道〜東京では、2025年度以降の複数の年度において供給信頼度基準(目標停電量)を超過しており、九州エリアでは2025年度以降、継続的に目標停電量を超過することが報告されている。
また2024年度容量市場メインオークション(実需給年度:2028年度)では、各エリアの供給信頼度(kWh/kW・年)は、北海道:0.017、東北東京:0.018、九州:0.042と、目標停電量0.016を上回る結果となった。
ただし、このように年間EUEが供給信頼度基準(目標停電量)を超える要因は、実際の供給力不足だけでなく、現行の供給信頼度評価の考え方も一因であることが指摘されている。
特に、地域間連系線運用容量の設定方法は供給信頼度評価に大きな影響を与えることから、広域機関の「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」第105回会合では、連系線運用容量の取り扱いの見直しが提案された。
電力系統を安定的に運用するためには、熱容量等、同期安定性、電圧安定性、周波数維持、それぞれの制約要因を考慮する必要があり、4つの制約要因の限度値のうち、最も小さいものを連系線の運用容量としている。
広域機関の運用容量検討会では、毎年、翌年度以降の10か年分の連系線運用容量を算出しており、長期(第3年度〜第10年度)運用容量は、年間で一つの固定値(1断面/年)としている(図2の緑線)。
ただし、4つの制約のうち、同期安定性、電圧安定性、周波数維持の制約は、電源状況等によって限度値が大きく変わるものであることから、連系線を有効に活用するため、至近年度である第1年度・第2年度については、月別(12断面)・平休日別(2断面)・昼夜別(2断面)などに算出断面を細分化し(12×2×2=48断面/年)、運用容量を拡大している(図2の赤線)。
さらに、連系線混雑により卸電力市場取引の市場分断が見込まれ、かつ周波数維持が制約要因である場合には、週間計画以降の運用容量を30分コマ(最小粒度)に細分化し、より一層の運用容量の拡大を図っている(図2の紫線。ただし年間計画と比べて需要が低下する場合、運用容量減少となることもある)。
現時点、これが適用されるのは、中部関西間連系線(関西向き)と中国九州間連系線(九州向き・中国向き)の3つである。
ただし現行制度では、供給計画や容量市場における供給信頼度評価では、「年間運用容量(赤線)」を採用しているため、紫線のような30分細分化(拡大)容量をどのように取り扱うかが論点となる。
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