EUE評価においては、Aエリアで需給変動(供給力低下・需要増加)により停電するおそれがある場合には、他エリアから供給力を融通することとしている。この際に連系線の運用容量が小さいと融通できる量が少なくなるため、同じ予備率であったとしても停電量の期待値、つまりEUEは大きくなる。
中国九州間連系線(九州向き)は、熱容量が夏季278万kW〜冬季326万kWであるところ、周波数制約及び太陽光発電不要解列量の控除により、現在の運用容量は0〜45万kWとかなり小さく設定されている。先述の表1で、九州エリアの年間EUEが他エリアと比べて大きく、目標停電量を超過している理由は連系線運用容量が小さいためである。
既存の連系線のポテンシャルを適切に評価し、これを供給信頼度評価(EUE算定)にも適用するならば、不必要な供給力対策を避けることも可能となると考えられる。
ただし、過度に楽観的な算定は、電力の安定供給を損ねるおそれもあるため、連系線運用容量の30分細分化・拡大が、どの程度の蓋然性をもって適用可能なものであるか、慎重な検討が必要となる。
現在、周波数維持が制約要因である中部関西間連系線(関西向き)、中国九州間連系線(九州向き・中国向き)では、その周波数維持限度値を下記の計算式により算出している(周波数低下側の場合)。
周波数維持限度 = 系統容量 × 系統特性定数 + EPPS見込み量 − 発電機解列量
青字:過去実績(需要実績、PV発電実績、設備容量)を元に定期的に更新するもの(「発電機解列量」とは、周波数低下時(59.0Hz)にUFR及び単独検出機能により解列する発電機の見込み量)
緑字:設備増強等大きな系統状況の変化等があった場合に必要に応じて更新するもの
ここで「系統容量」は、需要と相関があり、供給計画で対象としている至近10か年程度であれば傾向が大きく変わるものではないと考えられる(※広域機関による最新の「全国及び供給区域ごとの需要想定」では、データセンター等による電力需要は全国で4.7%増、北海道エリアで11%増の見込み)。
また、「発電機解列量」はFRT要件非対応の旧式の太陽光発電の解列が主な原因であり、今後はPCS取替(PCSの耐用年数は15年程度)が進むにつれて減少していく(よって、周波数維持限度は上昇方向)と推測される。
ただし系統特性定数に関しては、現在「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」において、見直しに向けた検討が進められており、この結論次第では、周波数維持限度が変化する可能性もある。
よって、供給信頼度評価における30分細分化運用容量の適用は、当面は第1年度・第2年度のみを対象として、長期断面への織り込みについては今後の検討課題と整理した。
具体的には、供給計画の短期断面(第1年度・第2年度)及び、夏冬の電力需給検証における需給バランス評価(予備率評価)に対して、30分細分化運用容量を適用することとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10