従来(化石燃料)のプロパン(C3H8)やブタン(C4H10)が炭素と水素から構成されていることと同様に、グリーンLPガスの製造には、原料として炭素と水素が必要である。原料に含まれる水素を利用する場合を除き、水素は外部から調達する必要があるが、2050年政府目標の水素価格20円/m3を達成すると仮定しても、グリーンLPガスの製造原価は現在のLPガス卸売価格の約1.5倍になると試算されている。そのため、グリーンLPガスの普及には、大きなコストダウンにつながる技術開発が必要とされている。
なお、合成燃料の原料や製造技術は様々であるが共通点や関連性も多いため、グリーンLPガスだけで見るのではなく、連産品や副産物も含めたプロセス全体としての経済性を検討する必要がある。
日本LPガス協会は、2020年11月に「グリーンLPガスの生産技術に向けた研究会」を設置し、水素と炭素の人工合成によるプロパン合成(プロパネーション)や、欧州で取り組みみが進むバイオLPガス等について調査を行い、2021年3月に報告書を取りまとめた。
これを受け、LPG輸入元売りの大手5社は、2021年10月に「日本グリーンLPガス推進協議会」を設立し、LPガスのグリーン化事業を共同で進めることとなった。同協議会では、CO2と水素から100%に近い収率で合成LPGを得る新技術や、バイオメタノール・DME経由LPガス間接合成法の技術開発を進めている。
こうした民間による取り組みが進む中、グリーンLPガスに関する課題を官民で共有し、協議する場として、「グリーンLPガス推進官民検討会」が2022年7月に設立された。官民研究会では、グリーンLPガスの社会実装に向けたロードマップ作りや品質基準の統一化、トランジション(移行)期間での燃焼機器の省エネ化とその普及促進等について、検討を進めている。
官民研究会は2024年3月に、グリーンLPガスの社会実装に向けたロードマップ(図6)を公表した。これは、2050年時点でのLPガスの全量カーボンニュートラル化を視野に、2035年時点で想定される需要(1,250万トン)の16%(約200万トン・CO2換算600万トン)の非化石化を目指すものである。
燃料自体の脱炭素化としては、海外からのグリーンLPガスの輸入を100万トン、地産地消型の国内生産を20万トンとするほか、カーボンクレジットによるオフセット20万トンも見込むものとする。また、ユーザー側での省エネ化や重油等からの燃料転換(LPGは需要増加)の推進で60万トンを見込んでいる。
官民検討会では、「カーボンクレジット活用検討WG」を設置し、カーボンオフセットLPガスの適正な利用に向けた自主ガイドラインを策定している。各社では、カーボンオフセットLPガスの販売に関する自社規程「個別ルールブック」を作成し、毎年度の販売に対する自主チェック及び第三者機関によるモニタリングを実施している。
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