本格的な導入に向けて制度設計が進んでいる同時市場。「同時市場の在り方等に関する検討会」の第16回会合では、同市場における揚水発電や蓄電池、分散型エネルギーリソースの取り扱いなどについて議論が行われた。
現在、国(資源エネルギー庁・電力広域的運営推進機関)は、電力の安定供給と経済性の両立を求め、kWhとΔkWを同時約定し最適化する「同時市場」の導入に向けた検討を進めている。同時市場では、主に火力発電の特性を念頭に、起動費や最低出力費用、限界費用といったThree-Part情報に基づき、系統制約を考慮した上で、電源の起動停止(SCUC)や出力量(SCED)の決定が行われる。
国内に約2,750万kWほど存在する揚水発電や、今後の大量導入が想定される蓄電池、デマンドレスポンス(DR)等の分散型エネルギーリソースを同時市場でどのように取り扱うかは重要な論点である。
このため「同時市場の在り方等に関する検討会」の第16回会合では、同時市場においてこれらのリソースを取り扱う仕組みや入札・精算の方法や課題について整理を行った。
火力発電等は、燃料確保に問題のない平時においてはkW面のみを考慮して発電計画の作成や取引が可能であるのに対して、揚水発電や蓄電池はkW面だけでなく、「池容量」や「SOC(State Of Charge)」といったkWh面(より短期的な燃料制約)についても考慮する必要がある。
2023年度以前は、調整力公募に伴う電源I・II契約に基づき、TSO(一般送配電事業者)が池水位(kWh)を管理し、揚水発電の運用(揚水TSO運用)を行っていたが、2024年度以降はこの運用主体が調整力提供者(BG)に変更された(揚水BG運用)。
揚水BG運用では、調整力提供者(BG)は経済的な取引を目的として発電計画と池水位(kWh)の計画を作成するが、最低1日1回TSOと連携し、TSOはkWhを考慮した余力の範囲内で揚水を運用するハイブリッド的な仕組みとなっている。これを「ストレージ式運用」と呼んでいる。
また、需給逼迫や再エネ余剰などの緊急時には、一時的にTSOが池全体を運用(TSO運用)することも認められている。
なお、蓄電池は一般的に揚水発電と比べて小規模で設備数が多いため、すべてをTSOの中給システムで管理することは困難である。このため、専用線オンライン接続された10MW以上の蓄電池ではストレージ式運用として、それ以外の蓄電池では、TSOがkWhを管理しない簡易な運用としている(非ストレージ式運用)。
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