2030年目標へ残された大きなギャップ――環境・国交・農水省が目指す再エネ普及策の現状第73回「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」(1/4 ページ)

「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」の第73回会合で、環境省・国土交通省・農林水産省による2040年度に向けた再エネ普及施策の動向が報告された。

» 2025年06月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 第7次エネルギー基本計画に基づく2040年度エネルギー需給の見通しでは、幅を持った電源構成のみが示されたのに対して、第6次エネ基の2030年度エネルギー需給の見通しでは、より具体的な数値が示されている。

 例えば太陽光発電は、1,290〜1,460億kWh(電源構成14〜16%)、設備容量10,350〜11,760万kWという2030年目標に対して、2024年12月時点の導入量は7,560万kWと一定のギャップが残されている。

 このため各省庁では、2030年目標の達成に向けて表1のような施策をそれぞれ講じており、資源エネルギー庁の「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」では、毎年この進捗(しんちょく)状況を確認している。

表1.太陽光 2030年目標と各省庁施策の進捗状況 出典:再エネ大量導入小委を基に筆者作成

 同小委員会の第73回会合では、環境省・国土交通省・農林水産省による施策のフォローアップ及び2040年度に向けた取り組みの方向性が報告された。フォローアップの対象はすべての再エネ発電であるが、本稿では主に太陽光発電に関する進捗と今後の方向性を報告する。

 なお、これまでの計画ではペロブスカイト太陽電池の導入は前提とされておらず、ペロブスカイトはいずれの省庁施策においても、残されたギャップを埋める有力な手段となると期待される。

公共部門の率先実行の進捗状況

 2030年エネルギーミックス達成に向けては、国や地方公共団体は率先垂範が求められるため、公共施設の屋根や敷地内での太陽光発電導入目標として、6.0GWを掲げている。

 国(政府)は保有する施設が少なく、2030年度目標0.06GWに対して導入0.002GW程度、保有施設の多い地方公共団体では目標4.82GWに対して導入0.189GWに留まっている。

 このため国は第7次エネ基の策定に伴い、政府実行計画を2025年2月に改定し、太陽光発電を設置可能な建築物(政府保有施設)については、2030年度に約50%以上、2040年度までに100%の設置を新たな目標とした。

図1.公共部門における太陽光発電導入の進捗状況 出典:再エネ大量導入小委

 公共部門でも民間部門と同様に、ノウハウ不足や人員不足、資金不足等が、太陽光発電導入が進まない理由とされている。一施設当たりの規模が小さい場合、PPA(第三者保有モデル)事業であっても採算性確保が難しいことが課題であったが、複数施設を束ねて規模を大きくする取り組み方針が示された。

 また小規模な地方公共団体では、専門知識の不足や組織内の導入方針とりまとめ主体の不在が課題であったが、専門人材の派遣の強化や都道府県をとりまとめ役とする導入モデルの構築を進める予定としている。

 既存施設では耐荷重や屋根の形状等が制約となってきたが、ペロブスカイト等の次世代型太陽電池はこの解消策として期待される。国はペロブスカイト太陽電池の率先導入に向け、GW級の量産体制構築に貢献できるタイミングで導入目標を設定する予定としている。

 また地方公共団体では脱炭素化だけでなく、レジリエンスの強化も重要テーマであることから、「第一次国土強靱化実施中期計画」(素案)において、災害時に活用可能な再エネ設備や蓄電池を避難施設・防災拠点へ導入を進めていくこととする。具体的には、2030年度までに2,500施設(62.5%)、2035年度までに4,000施設(100%)への導入完了を目標として設定する。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR