SSBJ基準において開示が求められる数値は、対象数値を直接モニタリングする方法で行う直接測定のほか、合理的な方法による見積りを使用した測定も認められている。例えば、見積りによるGHG排出量の算定は、「活動量」×「排出係数」×「地球温暖化係数」の算式によって行うが、事業年度のうち一部期間の「活動量」の測定を概算で行うことも想定される。
有価証券報告書の提出後に、概算部分の確定値が判明することも想定されるが、当該有価証券報告書の訂正報告書の提出を要するか否かが論点となる。
金融商品取引法上の訂正報告書は、有価証券報告書提出会社が訂正の必要性を認めたときに提出するが、その提出の要否は、事業年度末又は有価証券報告書の提出日時点の状況について判断するものであり、当該時点以降の事情の変更は、訂正事由とはならないと理解されている。よって、WGではこれを踏まえ、見積り情報については訂正報告書の提出が必要となるわけではないという基本的な考え方が確認された。
法定開示書類である有価証券報告書には、重要な事項について虚偽の記載や開示すべき重要な事項の記載が欠けていた場合には、損害賠償責任の特則、課徴金納付命令等の適用がある。
サステナビリティ情報には、定性情報、見積り情報、将来情報といった情報が多く含まれ、財務情報と比較すると相対的に不確実性が高いため、企業としては、虚偽記載等の責任を問われることを恐れるあまり、有価証券報告書での積極的な情報開示を避けようとすることが懸念される。
このため、まずは、企業の統制の及ばない第三者から取得した情報や見積による情報が含まれるScope3排出量について、セーフハーバーを整備することとした。
仮にScope3排出量に関する定量情報が事後的に誤りであったことが判明したとしても、「企業の統制の及ばない第三者から取得した情報を利用することの適切性(情報の入手経路の適切性)や、見積りの合理性について会社内部で適切な検討が行われたことが説明されている場合」であって、「その開示の内容が一般に合理的と考えられる範囲のものである場合には、虚偽記載等の責任を負わないとすることが適当である(セーフハーバー)」とした。
WGでは、金融庁においてこの方針を踏まえた「開示ガイドライン」の改正を行うことを提言している。
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