2030年度の国内水素供給量は290万トンの予測 長期では輸入がけん引の見通しに

矢野経済研究所は2025年9月1日、国内の水素エネルギー供給事業に関する市場予測の結果を発表した。

» 2025年09月08日 12時30分 公開
[スマートジャパン]

 矢野経済研究所は2025年9月1日、国内の水素エネルギー供給事業に関する市場予測の結果を発表した。国内における2030年度の水素供給量は290万トンに拡大すると予測している。

 資源エネルギー庁の統計によると、国内における2024年度の水素の年間導入量(供給量)は年間約200万トンとなっている。この内訳は国内製造196万トン、輸入4万トンで、国内製造の大部分は、化学、石油精製、鉄鋼などの工業用途における副生水素等とみられる。

 この他に再生可能エネルギーを活用したグリーン水素製造の実証実験等が進められているものの、その供給量は合計で数千トン程度にとどまると推測される。こうしたグリーン水素などを製造する小規模プロジェクトが各地で立ち上がっているが、将来的な国内需要量が不透明なこともあり、2025年6月時点で計画されている年産1万トンを超える大型案件は限定的である。

 国内における2030年度の水素供給量は年間290万トンと予測する。このうち国内製造は212万トン、輸入は78万トンを見込む。国内製造では年産1万トンを超える大規模設備の稼働計画が限定的であり、小規模案件が多数を占めるとみられる。そのため、国内製造量の増加は緩やかに推移し、2024年度以降の供給量拡大は輸入がけん引する見通し。

国内の水素供給量の見通し 出典:矢野経済研究所

 水素の需要拡大に向けて、政府は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)」に基づく「価格差に着目した支援」および「拠点整備支援」などを整備している。これらは国内水素供給量拡大への追い風になるとみられるが、国内における需要の確保が不透明であることから、国の水素基本戦略における導入目標の最大値である年間300万トンには届かない見通しだ。

 国の水素基本戦略では国内における水素導入量目標(水素供給量)について、長期的には2040年1200万トン、2050年2000万トンを掲げる。矢野経済研究所の推計では、このうち国内製造はそれぞれ360万トン、600万トンで国内比率は約3割にとどまる見通し。国内では、グリーン水素の製造に必要な大規模な再生可能エネルギーの新規開発余地が豪州や中東諸国と比べて限られており、また、ブルー水素製造に必要なCO2貯留の適地も十分とは言えないことから、将来的にも輸入への依存が続くと予測した。

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