以上の前提条件のもと、2030年度における系統混雑想定のうち、「混雑設備数」は図3のとおり、年間の「混雑時間」および再給電(電源の持ち替え)による「出力制御電力量」の見通しは表2のとおりである。なお、再給電はメリットオーダーで実施するため、ここでの出力制御対象は、実質的に火力等の調整電源である。
表の1つのセル(1マス)の中に上下2段で数値が記されているが、上段は「移行シナリオ」、下段は「現行シナリオ」である。また、昨年度のシミュレーションから増加した箇所を赤色文字としている。
昨年実施したシミュレーション(2029年度を想定)と比較すると、今回のシミュレーションでは、再エネ電源や蓄電池の導入拡大により、ローカル系統の混雑設備数が東日本の3エリアを中心に増加している。
先述図2の発電コストの変化により、今回のシミュレーションにおける「移行シナリオ」では「現行シナリオ」と比べ、LNG電源の稼働が高まり石炭電源の稼働が低下することとなる。図4のように、LNG電源は一部のエリアに集中しているため、東北・東京・中部のLNG電源が接続する基幹系統にて混雑が増加する一方、関西や中国では石炭電源の稼働低下により基幹系統の混雑が減少する見通しとなった。
また、再給電指令による上げ/下げ調整電力量(基幹系統分)の値差を2円/kWhと仮定した場合、再給電費用は全国で3〜36億円/年程度と試算された。なお、再給電方式はあくまで暫定的な措置であり、できるだけ速やかにノーダル制等への移行に向けた検討を進めるべきとしている。
全国の年間出力制御電力量は933〜2,154GWh(9〜21億kWh)であり(表2の緑枠)、2030年度の全国需要電力量(送電端)比で0.1〜0.2%程度である。
また、2030年度における年間の最大出力制御電力の見通しは表3のとおりである。LNG火力の多い東京エリアでは「移行シナリオ」において、最大で813万kW(エリアH3需要比で14.1%)もの大きな出力制御が必要との試算結果となった。なお、発生時間帯が異なるので本来は単純合計することは適切ではないが、規模感として全国で1,125万kW程度の見込みである。
需要が多い時間帯においては電源の出力制御が必要となる系統混雑は発生しにくいため、ピーク需要断面における出力制御は全国で2〜13万kW程度(全国最大需要の0.01〜0.08%)、予備率が最小となる点灯帯(16:00〜20:00)における出力制御は全国で94〜146万kW程度(全国最大需要の約0.90%)と試算された。
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