第92回「広域系統整備委員会」で、2030年度の系統混雑や再エネ電源の出力制御量などの中長期見通しが公表された。
再エネ電源等の早期系統接続を実現する施策の一つとして、一般送配電事業者はノンファーム型接続の適用を順次拡大してきた。
ノンファーム型接続とは、エリア内における系統混雑の発生を許容する考えに基づき、平常時の系統制約による電源の出力制御を前提とした接続方法である。このため、ノンファーム型接続適用電源が増加するに従い、地内系統混雑も増加すると考えられる。
ただし、系統混雑解消のために出力制御を行った電源は、所定の供給力・調整力を発揮することができないため、系統全体の供給信頼度にも一定の影響を与え得るものである。現時点、ノンファーム電源は容量市場や需給調整市場への参加が認められているものの、今後の系統混雑発生に応じた検討が求められている。
このため電力広域的運営推進機関の広域系統整備委員会では、これまでも系統混雑に関する中長期見通しを示してきたが、その第92回会合では、2030年度の系統混雑に関する中長期見通しを示すこととした。系統混雑の見通しは、再エネ発電事業者等の収益性評価に資する情報であり、発電所等の立地を非混雑系統へ誘導することにより、経済合理的な系統設備形成が進むと期待される。
将来の系統混雑を想定するには、どこにどのような需要や電源があり、どのように稼働するかをシミュレーションすることが必要となる。
今回の系統混雑に関する中長期見通しにおける前提条件は、2030年度末の電源・需要および系統構成を基本としており、2030年度までに運用開始が予定されているデータセンター等の需要拡大や地域間連系線の増強計画等が考慮されている。
基幹系統については、全国大のメリットオーダーシミュレーションを元にした年間8,760時間の系統混雑等の算出を行い、メリットオーダーの対象となる火力電源の連系が少ないローカル系統では、需要・発電出力の積み上げにより、年間8,760時間の算出を行った。
全国大のメリットオーダーシミュレーションに際しては、発電単価の設定が重要な要素となる。これまで広域系統整備委員会では、2015年5月の「発電コスト検証ワーキンググループ(WG)」のコストデータを使用してきたが、2025年2月には最新の発電コスト検証WG報告書が公開された。
2015年版と2025年版の最大の違いは、CO2対策コストも含めた火力発電所の発電単価である。2025年版では、CO2対策コストの上昇により石炭火力の発電単価がLNG火力より高価となり、燃種毎のメリットオーダーが従来のメリットオーダーから変化する(LNG火力が優先的に稼働する)こととなった。
系統混雑の中長期見通しの算出においては、将来の可能性についてあらかじめ備えることも重要であるため、従来の2015年版発電コストに基づく「現行シナリオ」と2025年版発電コストに基づく「移行シナリオ」の両方について、広域シミュレーションを実施した。
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