諸外国で先行する排出量取引制度において、発電部門に対してベンチマーク方式による排出枠の割当を採用している事例としては、韓国と中国が挙げられる。
韓国のK-ETSにおいて、電力部門は、第1フェーズではグランドファザリングの対象であったが、第2フェーズ以降はベンチマーク方式を採用している。その第2フェーズでは「燃種別ベンチマーク」を採用し、燃料種ごとの効率化を追求するのみであったが、第3フェーズでは段階的に「火力平均ベンチマーク」に移行し、LNGへの燃料転換を促す仕組みとしている。
なおEU ETSでは、当初のベンチマーク及びグランドファザリング方式から、すでに2013年の第3フェーズ以降、全量有償化に移行しており、複雑かつセンシティブなベンチマークを設定する必要はない仕組みとなっている。
火力発電という基本形態を維持しながら化石燃料に由来するCO2排出量を削減するためには、石炭等からLNGへの燃料転換や水素・アンモニア等の脱炭素燃料への転換、CCUSが求められる。
ただし、火力電源の新設やリプレースには、数年〜10年程度の年数を要し、近年では世界的なガスタービン需要・大型変圧器需要の高まりから、納期・導入リードタイムは長期化していることが報告されている。また、水素等やCCSの導入拡大は2030年以降と見込まれており、第2フェーズにおいて発電事業者が取り得る排出削減手段は限定的と考えられる。
第2フェーズ(2026〜2032年度)の7年間では、発電事業者各社の現在の電源構成がほぼそのまま継続し、石炭火力が中心の事業者は排出枠調達のコスト負担が大きくなり、発電コストの上昇を招くと懸念されている。この逆に、LNG火力が中心の事業者は排出枠販売による収益機会となるが、このような固定的状態が一定期間続くこと自体が、公平性の観点から一つの懸念材料となり得る。
このため電気事業連合会では、第2フェーズの発電ベンチマークを、韓国K-ETSの第2フェーズのように、「燃種別」に設定するよう要望している。
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