「排出量取引制度小委員会」の第3回会合で、国際競争によるカーボンリーケージの緩和や、研究開発投資に対する考慮など、排出枠の割り当てにおける勘案事項に関しての方針が示された。
2026年度から、CO2の直接排出量が10万トン以上の事業者を対象とした排出量取引制度が開始され、対象事業者は毎年度の排出実績と同量の「排出枠」を保有することが義務づけられている。
本制度では、排出枠の割当は可能な限り、「ベンチマーク方式」を適用することとしており、ベンチマークの設定が困難な業種については、基準となる年度の排出量に一定の削減率を乗じる「グランドファザリング方式」を適用することとしている。
ただし、排出枠の割当てに際しては、事業者の過去の削減努力や、国際競争によるカーボンリーケージの緩和、研究開発投資の維持などを考慮することが重要であり、本制度では、これらの「勘案事項」に応じて排出枠割当量を追加・調整することとしている。
経済産業省の「排出量取引制度小委員会」の第3回会合では、これら勘案事項の具体化について、検討が行われた。
排出枠割当方法の一つである「グランドファザリング方式」は、相対的に簡便である反面、事業者の過去の削減努力(早期削減)が反映されないという課題がある。この課題に対応するため、グランドファザリング(GF)による割当対象の排出源については、起点となる過去の年度から基準年度までにGF基準相当以上に削減した量を考慮し、割当量の追加を行うこととしている。
小委員会事務局からは割当量の追加を行う期間として、第2フェーズ(2026〜2032年度)の7年間のうち、2026〜2030年度の5年間とする案が示された。なお国は、2033年度から発電事業者に排出枠の有償オークションを導入することを公表しているが、第2フェーズの終了年度は必ずしも明確にされていない。
次に、過去の削減努力を勘案するにあたり、何年遡るべきか、過去の排出量実績をどのように確認するかが論点となる。
試行的に実施されたGX-ETSの第1フェーズ(2023〜2025年度)では、制度への参加や目標設定は企業の自主性に委ねられているため、基準年度についても「2013年度」を原則としながらも、任意の年度を選択可能であった。
2026年度からの第2フェーズでは、対象事業者は本制度への参加及び目標達成が義務となるため、事業者間の公平性を確保する観点から、勘案の起点年度は一律に定めることが適切である。
第1フェーズから参加を継続する制度対象者の多くが、すでに2013年度を起点としていることから、第2フェーズにおいても原則、2013年度を起点年度とすることとした。ただし、2012年度以降に新設された事業所等については、新設の翌々年度を起点とする。
いずれの場合でも、GFにおける基準年度の考え方との整合性の観点から、勘案の起点とする年度の排出量は、当該年度の前後を含む3カ年度(原則、2012〜2014年度)の平均値とする。
本制度において対象事業者は、国に登録した第三者機関(登録確認機関)により、自社の排出量等の確認を受ける必要があるが、2012〜2014年度当時の証憑が十分に残っていない場合、排出量算定結果の妥当性を検証することが困難となる。
この場合、代替手段として、温対法に基づく算定報告公表制度(SHK制度)における過去の報告値を利用することとする。ただし、SHK制度では第三者による確認が不要であり、不正確であるおそれもあるため、割当量が保守的に算定されるよう、算定結果に1以下の係数を乗じる。具体的な係数は、今後の検討予定である。
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