電力の安定供給と並び、コストの抑制も重要である。2024年度の需給調整市場の全面開始以降、応札量不足を背景に、多くのエリア・商品で調整力単価は高騰し、レベニューキャップ(RC)制度で承認された調整力費用を大きく上回る状況が続いていた。
エリアにより揚水随契の単価や契約期間は異なるが、例えば中部エリア(中部電力パワーグリッド)では、揚水随契(2025年4月〜11月)の単価は0.74円/ΔkW・hであり、同期間の需給調整市場単価6.19円 /ΔkW・hと比べて、大きなコスト抑制を実現している。
揚水随契を行ういずれの一送も、揚水随契と需給調整市場、余力活用をうまく組み合わせた「ポートフォリオ」調達を行っており、中部PGの総合的な需給調整費用は1.86円/ΔkW・hとなり、RC承認単価(2.25円/ΔkW・h)を下回った。
今回報告された揚水随契を行っている一送5社の調整力総合単価等は表1のとおりである。いずれの社も、揚水随契単価は需給調整市場単価より大幅に低く、揚水随契は調整力費用の低減を通じた需要家負担の抑制に有効な手段であることが確認された。
中部PGの報告によれば、揚水随契の契約額は、揚水機貸与に伴い発電事業者に発生する、卸電力取引市場での逸失利益及び供給力の減少に伴う代替調達コスト等の実績に対し、事後精算を実施しているとのことである。
BGが需給調整市場に応札する単価も基本的には同じ考え方に基づくと思われるが、結果として単価の違いが生じている。これは、一送が随契により揚水の調整力を使用する場合は、実需給断面で利用の要否を判断できるため、BGが計画断面で拠出する場合と比較して調整力としての期待量が増加するためと考えられる。
一送が揚水随契によりあらかじめ必要調整力の一部を確保することは、需給調整市場における調達量・取引量を抑制し、火力や蓄電池等の他のリソースの市場参加・取引機会を制限するおそれもある。
このため一送各社からは、揚水随契開始以降の調整力(特に高速商品)の調達実績が報告された。図6の中部PGに限らず、揚水随契開始後も、一次調整力等の高速商品については応札率・充足率100%未満が継続しており(※揚水随契前から応札率の高い北海道エリアを除く)、他のリソースの市場参加・取引機会は確保されていることが確認された。
また北海道エリアでは、蓄電池による調整力の調達実績は揚水随契開始以降も大きな変動は無く、調達単価も高止まり状態であることが報告されている。
なお2025年6月から、調整力募集量の抑制のため、いわゆる自然体余力(起動済み電源の余力)の控除が開始されたため、全国的に需給調整市場における充足率は改善した。2026年度は自然体余力控除が行われず、その分の募集量は増加するため、2026年度に揚水随契が行われたとしても、他のリソースの市場参加・取引機会は一定程度確保されると考えられる。
また一部の蓄電池事業者からは、公平性の観点から、揚水発電だけでなく、全てのリソース・事業者に対して平等に随意契約交渉の機会を与えることが提案され、一送からも前向きに検討するとの回答が行われた。
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