先述の通り、FIT証書の販売収入は再エネ賦課金の低減に充てられる。2024年度のFIT証書の約定量は約604億kWhであり、約定加重平均価格0.4円/kWhを乗じると約242億円となる。2024年度の買取費用等4兆8,172億円から回避可能費用等2兆1,322億円を控除した2兆6,850億円と比較すると、その低減効果はわずか0.9%に留まる。
また非FIT証書の販売収入は、非化石電源の新増設や維持に充てられる。旧一般電気事業者であった発電事業者及び電源開発は、非FIT証書販売収入の額及び使途について、資源エネルギー庁に報告することが求められており、2024年度は総額595億円であった。足下ではインフレが進行しており、現行の上下限価格を維持した場合、非化石電源の維持・拡大のインセンティブとしての非化石証書の経済価値が実質的に目減りしてしまう恐れがある。
また、再エネの主力電源化に向けては、FIT/FIP制度から自立した再エネ電源への新規投資・再投資を進める必要があり、需要家等のオフテイカーとの中長期の相対契約(PPA)の重要性が一層高まっている。
需要家自身が直接参加可能である再エネ価値取引市場におけるFIT証書の取引価格は、事実上、環境価値の価格指標として機能しているが、FIT証書の約定価格が下限価格0.4円/kWhに張り付いていることや上限価格が4.0円/kWhであることは、いずれも需要家がPPAを締結するインセンティブを損ねている。
これらを考慮すると、上下限価格のいずれについても一定の見直しが求められる。ただし、FIT証書は、高度化法義務達成市場の需給が逼迫した際の非FIT証書の代替的な義務履行手段として認められているため、小売電気事業者の負担にも配慮する必要がある。
また、小売電気事業者は非FIT証書を購入することにより高度化法義務を順守する必要があるが、下限価格はFIT証書が非FIT証書より0.2円/kWh安価であるほか、実際の約定価格は0.9円/kWhの差が生じている。小売電気事業者はこのような価格差分を需要家から回収することは困難であり、特に経過措置料金(規制料金)の機動的な改定が困難な旧一般電気事業者では、より大きな問題を抱えていると言える。
よって、上下限価格の見直しに際しては、FIT証書と非FIT証書の関係性についても十分な考慮を行う必要がある。
なお、小売電気事業者や需要家の予見性を確保し、事業環境の変化に対する配慮を行う観点から、2026年度は現行の各市場の上下限価格を据え置くこととした。つまり、上下限価格の見直しは、2027年度以降が対象となる。
現時点、下限価格0.4円/kWhで取引可能な再エネ価値取引市場(FIT証書)の価格が実質的な価格指標となっているため、それ以外の非化石電源の取引が劣後する状況が生じている。今後、FIT証書の発行量の減少が進むと突然大きな価格変動が生じるおそれもあり、他の非化石電源の取引にも混乱が及ぶことも懸念される。
なお、FITからFIPへの移行や卒FITは、当該再エネ発電設備が存在する限りにおいて、FIT証書発行量の減少がそのまま非FIT証書の増加となる。この観点では両者を一体的に捉えることも可能であり、当面はFIT証書と非FIT証書の価格のバランスを確保することが重要であると考えられる。
これらを踏まえ、再エネ価値取引市場(FIT証書)の下限価格は、2027年度に現行の非FIT証書市場の下限価格(0.6円/kWh)まで引き上げ、2028年度以降も非FIT証書市場の下限価格の水準と合わせることとした。
FIT証書の上限価格についても、PPAを阻害する一因となるほか、再エネ賦課金の低減効果が制限されるといった弊害があるため、見直しが求められる。ただし、現行制度では非FIT証書の需給逼迫時に限り、小売電気事業者はFIT証書を高度化法義務履行の代替手段として使用できるため、FIT証書価格の高騰は小売事業者の負担を増加させるおそれもある。
このため、FIT証書市場の上限価格は、高度化法義務履行の「代替手段」のあり方について検討を行ったうえで、第3フェーズ中(2026〜2028年度)に撤廃する方向性が示された。
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