巨大なゾウさんが空を行く? ジャンボ機エピソード集秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)

» 2014年02月21日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

世界で1台だけの自動機体洗浄機

 旅客機の洗浄は通常、手洗いで行われる。小型機ならまだしも、ジャンボ機はその巨体ゆえ、20人で手分けしても1機の洗浄を終わらせるのに4時間もかかっていた。そこで開発・製造されたのが、自動機体洗浄機である。

 成田空港の一角に置かれていた鉄骨製のこのマシンは、間口約90メートル、高さ約26メートル、奥行き約100メートル。間近で見るとまるで巨大なジャングルジムだ。JALと川崎重工業が共同で、総工費20億円と10年の歳月を費やして建設した。同マシンの稼働後は、ジャンボ機1機の洗浄を5人グループで、100分で終了できるようになったそうである。747を世界で最も数多く保有し、“ジャンボ王国”と呼ばれたJALだからこそ必要なマシンだったのだろう。

 JALの747の退役後は、この自動洗浄装置も解体され、成田の名物がまた一つ静かに姿を消した。

飛行機と空と旅 JALが所有していた747の自動機体洗浄機(撮影:チャーリィ古庄)

政府専用機に乗る方法

 友人の娘に「どの飛行機に乗ってみたい?」と聞いたときのことだ。エアバスの総2階建て機A380? それとも最新のボーイング787? 豪華な旅行がしたいと言っていたのでそのどちらかだろうと予想していたら、彼女の答えは意外や意外。「私、政府専用機に乗りたい」と言った。

 政府専用機──つまりジャンボ機(747-400)が好きなのね? そう話を向けると、彼女は「ジャンボ機かどうか知らないけど、政府専用機に乗りたい」と繰り返す。「だって、中がすっごく豪華なんでしょ」と。国の要人や皇族が外国を訪れるときに使用される政府専用機。最近は海外での災害・事件などの緊急時にも活躍するようになった。キャビン内部は一般の旅客機とはまったく違う設計で、執務室や会議室、秘書官の事務室、記者会見用の席などがあり、シャワーも完備している。

 一般の人には縁のない飛行機だが、乗れる可能性が皆無というわけではない。例えば、首相や閣僚が海外でのサミットなどに出席する際、マスコミ関係者が取材のために同行する。高校2年になる彼女に「将来、新聞記者になれば乗れるかもね」と教えると、彼女は「タダで?」と聞いてきた。国民の税金で買っている飛行機なので、たとえ報道陣でもタダでは乗れない。ちゃんと料金を徴収される。とはいえ、一般の旅客機のビジネスクラスほど高くはなく、おそらくエコノミー料金程度だと思うが。

 現在2機を保有する政府専用機の747-400は2018年度末で退役し、後続機種の選定に入っていることが先日発表された。燃費効率に優れた777や787が候補として浮上しているほか、一部にはエアバスが開発中の最新鋭中型機A350を推す声もあるそうだ。

飛行機と空と旅 政府専用機も747-400だが、キャビン内部は一般の旅客機とはまったく違う設計だ

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