JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――第3回「空の上のレストラン」秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/6 ページ)

» 2014年09月05日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

機内食に注力できない時期が続いた

JAL顧客マーケティング本部・商品サービス開発部の開発グループ長、田中誠二氏

――飛行機をよく利用する人に「フライトの一番の楽しみは?」と聞くと、やはり「食事」という答えが少なくありません。ニューヨーク線の機内で会った人たちは、JALの食事にみなさん満足そうでした。ビジネスクラスの食事は、この10年とか15年でずいぶん豪華になりましたね。

田中: 昔はどちらかというと、エコノミークラスの食事がベースになっていて、それを少しグレードアップさせたのがビジネスクラスの食事でした。ファーストクラスだけは、当時からまったく別世界のものでしたが。でも、今は違います。エコノミーの派生というより、むしろファーストクラスに近い食事がビジネスクラスで提供されるようになっています。

――食事サービスの大きな見直しは、だいたい何年ごとにあるんですか?

田中: ほぼ5年のスパンですね。1990年代の半ばに「SEASONS」というビジネスクラスの新しいブランドを立ち上げ、そのときに機内食も大きく変えました。その後、2000年にちょっとしたリニューアルを実施しています。本当はそのあとも5年ごとに見直していかなければいけなかったのですが、私どもの会社の状況があまり良くなかったことから、機内食も注力できない時期がしばらく続きまして。お客さまの評価もその頃を境に低迷し、かなり厳しいご意見をいただいてきました。

コースで提供される和食と洋食のメニュー(撮影:倉谷清文)

――企画畑の社員の人たちにとっては、歯がゆい時代が続いたわけですね。転機を迎えたのは、経営が破綻して稲盛(和夫)さんが会長に着任してからですか?

田中: そうでした。コストを削減したり、社員の給料を下げたりというのは破綻した会社が当然やるべきことですが、稲盛会長は「お客さまに提供する機内食などはコストを下げてはいけない、むしろどんどん質を上げていくように」と社員に指導しました。続いて就任した大西(賢)会長も、今の植木(義晴)社長も、同じように「品質は絶対に下げるな」と言い続けています。私たち社員も、やりがいをもって取り組める会社になりました。

――そういう意味では、前回紹介した「SKY SUITE 777」の革新的なシートが完成し(参照記事)、機内食も「BEDD」という新ブランドが立ち上がって、これからが大きな勝負という感じなのでしょうね。

田中: おっしゃるとおりで、私の部署の社員たちもみんな「やってやるぞ!」という意欲に燃えています。この数年は、お客さまに本当に喜んでもらえるものをどうやって作り上げていこうかと、社員が一致団結して必死に取り組んできましたから。

新ブランド「BEDD」のドリームチーム。左から下村浩司氏、山本征治氏、狐野扶実子氏、山田チカラ氏(提供:JAL)

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