金融機関の合併や業務分割にともなって口座データを移管する場合、一般に次の2つの方法のいずれかを採用する。
(1)サービスを一定時間停止して、その間にデータ移管を行う。
(2)サーバーなどを二重化し、正常系でサービスを提供するとともに待機系で切替作業を行い、作業終了後に待機系でサービスを提供する。
しかし現在、証券会社のサービスはマルチチャネル化しており、営業店のほかATM (現金自動預け払い機)やインターネットなどの多様なチャネルで、しかも24時間365日継続してサービスを提供している。このような状況では、システムの切替やデータ移管のために土曜日、日曜日のような週末にサービスを停止することは難しい。一方、システムを二重化する方法はコストが問題になる。
今回の事例では、業務上の必要性から、平日の金曜日より移管先での業務を開始することとなった。このため、平日にデータ移管作業を実施する方式を検討し、実現した。
移管元および移管先のシステムは、システム基盤もデータベースもアプリケーションも異なっていた。そこで、両方のシステムを調査分析した結果、切り替えに時間のかかるデータベース切替方式でなく、何回かに分割して切り替えできるトランザクション(出庫データ、入庫データ)切替方式を採用することとした。この方式に基づき、処理時間などを含めた実現可能性の検証を行った。
最終的に、図1に示すような移管スケジュールを採用した。移管先システムの切替は、木曜日夕方(移管用の先出しデータの取り込み)、金曜日早朝(入庫データの取り込み)、翌週月曜日以降(手作業フォロー)という3 回のタイミングとなった。また移管元システムでは、木曜日夕方(移管用の先出しデータの作成)、金曜日早朝(入庫データの作成)、土日(出庫データの取り込み)の3回のタイミングであった。このような切替タイミングとなったのは、移管を受ける側の「何時までにこのデータが欲しい」という要件と、移管元の「何時からならこのデータは渡せる」という条件の双方を考慮した結果である。
また、口座の移管に際して、取引執行中などの理由で移管の対象外となるデータが必ず存在するので、このデータは3回目の翌週月曜日以降に順次手作業で移管することとした。件数が多くなると1日で処理しきれないという問題が発生するため、1回目および2 回目のタイミングでほぼすべてのデータを移管できるようにし、手作業による移管の件数を大幅に削減した。
平日にデータを移管する際の問題は、作業時間が少ないこと、予備日がないこと、ユーザーが業務遂行中であることである。これに対しては次のような工夫を行った。
(1)移管用プログラムの処理スピードアップ
今回のシステム環境で最も処理スピードが上がるようなコーディングルールを、開発に先だって部内検討会で策定し、徹底した。
(2)処理時間の見積もりの精緻化
開発機および本番機によるリハーサルを何回か行い、プログラム開発の段階ではみえないリスクを事前に発見することができた。この結果、移管作業時間の精緻な見積もりを作成することができた。
(3)スケジュールの共有
非常に厳しいスケジュールなので、個別作業の手順を詳細に明確化するばかりでなく、全体の作業スケジュール表を作成し、参加者全員がこれに基づき、進捗確認を行った。
(4)検証の自動化
処理に時間のかかる移管作業が平日の深夜から早朝にかけて行われるため、通常の場合のように帳票によるユーザー確認を行う時間がとれなかった。これを補うため、マスターデータベースと移管ファイルを基に、自動的に検証ができるツールを開発し、利用した。
平日切替の場合も、休日の場合と比べて基本的な仕組みを変える必要はない。しかし、平日の場合は予備時間を確保するのが難しいので、予想外の障害が発生した場合のリスクがとくに大きい。そのため入念な準備を行うとともに、少しでもリスクを小さくする工夫が必要となる。
野村総合研究所高木重史
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