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ネットリサーチ事業「infoQ」の課題と展望ITソリューションフロンティア:ソリューション(1/2 ページ)

» 2005年03月15日 00時00分 公開
[中村雅彦,野村総合研究所]

実用期に入ったネットリサーチ

 ネットリサーチは、Webによってアンケート調査を行う調査手法だが、既存のアンケート手法よりスピーディでローコストという点が評価され、急速に普及している。四半期決算、月次決算を採用している企業が増え、製品ライフサイクルが早まっている現在、ネットリサーチの有用性は非常に高く、かつ従来の手法よりもコスト削減が図れることとなる。

 ネットリサーチ事業者は、大きく3つに分類することができる。(1)既存の調査会社が、手法のひとつとしてネットリサーチも提供しているもの、(2)多数の会員を有するIT系事業者が会員をモニター化して実施しているもの、(3)IT系ベンチャーとして、専らネットリサーチ事業を行っているもの、である。

 (1)は調査設計、分析ノウハウに優れており、(2)はモニター獲得のノウハウと豊富なモニター数を誇る。(3)はネットリサーチに特化したシステムと体制をもち、ネットリサーチならではのコストとスピード感が特徴である。2004年9月1日、NRIが、GMO-M&S社と共同で開始したネットリサーチ事業「infoQ」(図1参照)は、(1)(NRI)と(2)(GMO-M&S社)のハイブリッド型と位置付けることができる。

図1 (クリックすると拡大表示)

ネットリサーチを巡る課題

 有用性が認められ、広く普及しつつあるネットリサーチだが、いくつか問題がある。第一の問題は、「サンプルの任意性」である。ネットリサーチは、あらかじめアンケート専用に集められたモニターに回答してもらうケースが多いため、サンプリング、という概念自体が存在しない。このため、市場を反映する「モニターの任意性」をいかに担保するかが課題であり、以前から議論の中心となっている。

 具体的には、モニターがネットユーザーの構成に準じることになるため、30歳代を中心に20歳代、40歳代が多く、とくに50歳代以降は相対的に少ないのが通常である(図2参照)。第二の問題は、ネットリサーチにおける回答者、ないしはネットリサーチ独特の「癖」である。たとえば、複数回答の選択肢では、すべての選択肢で高い値となるのが一般的で、さまざまな商品やサービスの利用意向も高めに出がちである。

図2

 これらは、従来方法のアンケート調査を行っていた企業が、ネットリサーチを採用した際に頭を悩ませる点でもある。

 第三の問題は、モニターの「教育効果」である。ネットリサーチが一般化し、モニターが調査に回答する機会が増えると、モニターは調査によって知識を得てしまい、一般に調査した場合と異なる傾向を示しがちになる。通常は滅多に知り得ない新製品やトレンドに関する情報を知ってしまう、といったことがこれにあたる。企業は、同業他社としのぎを削っているため、ネットリサーチ事業者には、同時期に同様な調査依頼が舞い込む。このため、最初に実施した調査によってモニターが知識を得てしまうと、後に実施した調査では同様の調査でも結果が異なる、といった問題は、すでに現実に起こっているという。

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