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コラム
» 2005年06月17日 09時35分 公開

生活者向け市場がデジタル情報家電を牽引するITソリューションフロンティア:技術

かつてITは、最初に企業向け市場で導入され、普及した後に、生活者向け市場へと展開された。しかし、ブロードバンド時代となった2000年以降、こうした流れに逆転現象が生じている。本稿では、今後有望視されるデジタル情報家電のネットワーク化に焦点を当て、生活者向け市場における今後の展開について考察する。

[一瀬寛英,野村総合研究所]

ITの成長は生活者向け市場から

 1990年代まで、ITは、最初に企業向け市場で導入され普及した後に、生活者向け市場へと展開してきた。電子メールやWebアクセスはその典型である。

 しかし、2000年以降、その流れに逆転が生じた。無線LAN、IP電話など、最近のITは、生活者向け市場で普及した後、企業向け市場で普及するという流れをたどっている。その背景には、ブロードバンドの普及があるものと考えられる。

 2002年、ブロードバンド環境を利用する世帯の数は、インターネットを利用する企業や事業所の数を上回った。多くの生活者が快適なインターネット接続環境を手に入れたことで、IP電話やインターネット放送など、大容量を前提とするアプリケーションにも手を伸ばすことができるようになった。

 この結果、高い信頼性と安定性を要求される企業向けの水準まで技術が成熟する前に、生活者向け市場にまず投入するという流れが生まれたのであろう。そして、現在の生活者向け市場においては、ネットワーク接続されたデジタル情報家電の活用が、次の有力なサービスになると予想されている。

デジタル情報家電の実用化ロードマップ

 デジタル情報家電のネットワーク化技術は、従来、PCやインターネット向けに開発された技術が、多様なデジタル情報家電向けに拡張されたという、いわゆる汎用的技術が大部分を占めている。拡張が進められ、その時点で実用可能と認知された技術が、段階的に実用化されていくことになる。

 デジタル情報家電のネットワーク化の実用化の進展は、大きく以下の3 段階に分けることができる(図1参照)。

図1

(1)揺らん期:屋内で閉じた利用

 2005年度までは、屋内でデジタル情報家電を利用するためのLAN技術が実用化される段階で、A/V(オーディオビジュアル)家電向けの技術が中心になる。また、無線LANも、煩雑なLAN配線を行う必要がなくなるため、その意義は大きい。

 しかし、この段階のネットワークは、屋内での閉じた利用にとどまる。たとえば、屋外からのネットワーク接続を容易にする次世代の規約であるIPv6や、屋内外の通信の信頼性を確保する品質保証技術、セキュリティ技術は、実用段階にはない。また、ネットワーク接続規約に準拠していない白物家電や環境家電を、ネットワーク上で利用するためのゲートウェイ技術も実用化されていない。

(2)普及期:屋外から屋内への接続が可能

 2007年度までに、揺らん期には実用段階になかったIPv6や品質保証技術、セキュリティ技術、ゲートウェイ技術が実用段階になる。このほか、近距離無線通信や電灯線通信など多様な伝送技術が実用段階になり、デジタル情報家電のネットワーク化の基礎技術がようやく整うこととなる。

(3)本格化:ユビキタスネットワーク化

 2008年度以降、デジタル情報家電は、いつでもどこでも誰とでもネットワークにつながるユビキタスネットワークと融合し、本格的なネットワークサービスが次々登場するようになる。

 この段階では、情報端末が、個別のユーザーやアプリケーションに必要な機能を自ら把握し、ネットワーク機器どうしが必要な情報を交換することで、ネットワークの設定や構成を自律的に更新する自律分散ネットワークが実用レベルに達していると考えられる。

 また、この段階までに、電子タグ技術が実用化され、成熟した技術としてデジタル情報家電のシステムの中で利用されていることが予想される。

 たとえば、衣類に付与される電子タグの情報を洗濯機が読み込み、外部情報サービスを参照することで、生地や色に適したプロフェッショナルな仕上がりを実現する、といったサービスが考えられる。

新たなデジタル情報家電の活用へ

 このように、デジタル情報家電のネットワーク化は、PCやインターネットで成熟した技術や先進的な技術、とくに生活者向けサービス技術を取り込みながら段階的に進む。

 携帯電話は、インターネットに接続できるようになって、通話以外の目的にも使われるようになった。デジタル情報家電も、つねにインターネットに接続されるようになると、生活者向け市場に牽引される形で、思いがけない新たな活用が、次々と生み出されていくことが大いに期待される。

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