社内にコンビニ設置、「飲食店がない」を解決――加賀電子「働きやすい」を形に イマドキの福利厚生(2/2 ページ)

» 2008年11月25日 09時08分 公開
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従業員の家族同士がパーティーで顔見せ、相談しあえる仲に

 「当社は、成績がいい部署や活躍した人たちに賞金も出します。それを使って、部署単位でレジャーを楽しむことも多いですね」と下山さん。年に2回のゴルフコンペや社内の慰安旅行など、みんなで楽しむレジャーにも積極的だ。

 創立40周年を迎えた2007年は、国内旅行を行った。参加者は本支社と関連会社の従業員、総勢1600人という大人数になる。また同社は長年にわたって、パーティーなど機会を作っては従業員たちの家族を招待。親交を深めてきた。このとき従業員たちは、家族をもてなすサービス係に徹するという。「仕事に集中できるのは、ご家族のご理解とご協力があってこそですから。従業員と会社の気持ちを、こうした形でお伝えしたいと考えています」

 家族にとっては、自分の家族がどんな人たちと一緒に仕事をしているのかが分かるので、安心材料になるだろう。メリットはほかにもある。「もしもご家族が会社に、または会社がご家族に相談したいことがあった時も、お互いの顔を知っているとささいなことでも連絡しやすい。ご家族とも接点を持つことは重要だと思います」

従業員の利便性を考え、社内にコンビニを設置

 さらに2007年4月には、新たに大規模な福利厚生施設ができた。社内にコンビニを設置したのだ。

 加賀電子が現在の場所に移転したのは2004年。それまで建物が分かれていた関連部署が一棟借りしたビルにそろったことで、社内コミュニケーションもさらに良くなった。「しかし、この付近には飲食店や商店がないんです。仕事をする上で、食事をしに行くのにひと苦労という状態は問題。引っ越す前から、これは何とかしたいと考えていました」と下山さん。

 ビルの地下には、以前レストランが営業していたスペースがあるので、まずここを活用できないかと考えた。加賀電子グループには、一般食料品/健康食品の販売と飲食店経営をしている系列会社のKGF(加賀フーズ)がある。そこで、社員食堂を作ろうという声が上がった。売店の設置案も出された。

 しかし食堂や通常の売店だと、利用できる時間帯は限られてくる。それでは作業が夜まで続く時に、従業員をフォローできない。忙しい時も健康を保持できるように保健室や仮眠室を用意しているのに、肝心の食事面がおろそかになるのでは困る。そこで浮上したのが、企業内コンビニの設置だ。

 とはいえ、外部に閉ざされ社員しか利用しない場所にコンビニを出店することができるのか。それを解決したのが、am/pmが提供しているmm(ミニマーケット)だった。すでに多くの企業に社内コンビニを提供しているam/pmならではのノウハウで、省スペースに各企業が求めているものをそろえるシステムが確立していた。

 ここでネックになったのが、ビルの問題。加賀電子が入っているビルは、世界的に有名な建築家が設計した、芸術性の高いもの。借り主といえども、勝手に仕様を変えることができない。しかしそれも、担当者の努力によって、クリアすることができた。

 こうして誕生した企業内コンビニは、8時から20時までの12時間営業。これまでは遠くまで行かないと買い物ができなかったが、今は社内でさっと必要なものが購入できると好評だ。特に忙しい時や天気が悪い日は、企業内コンビニの存在価値が高まる。ランチタイムだけでなく、夕方以降に残業用の食事を調達する従業員も多い。

 店鋪は約11坪というサイズながら、お弁当やサンドイッチ、お菓子、ドリンク類、雑誌、化粧品など、街のコンビニと変わらないくらいバラエティーに富んだ品ぞろえがなされている。また、広いカフェテリア風のテーブル席スペースが店舗に隣接しているので、従業員たちはここでコンビニで買ったものや自分で用意した食事を楽しめる。休憩時間のリラックスタイムにも活用され、コンビニを輪の中心にして、コミュニケーションの花が咲いている。

 制度、施設ともに充実度がうかがえるが、下山さんは「わが社の福利厚生はまだまた遅れている。これからも、社員の意見を生かして、より働きやすい環境を整えていきたい」と言う。その言葉だけでも、社員のモチベーションが上がるのではないだろうか。

『月刊総務』2007年7月号

「社員満足度、企業イメージアップのために今、求められる福利厚生制度の研究」(P16〜17)より


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