上司のやる気を高める方法――部下ができるいくつかのこと田中淳子のあっぱれ上司!(2/3 ページ)

» 2012年12月06日 09時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]

新任マネージャーにとっての安心材料

 ずいぶん前の経験だが、私の職場で大きな組織変更があり、ある人が急に大きな部門を任されることになった。そのマネージャーと私はそれまで数年間、同じチームにいたので、どんな人かだいたいは分かっていたが、新しく彼女が見ることとなる組織のメンバーにとって彼女は「未知」の存在だった。当然、その組織の特に若手メンバーは「どういうマネージャーなんだろう?」「何か大きく変わってしまうようなことはあるのだろうか?」と動揺していた。

 そのさなか、新任マネージャーである彼女は、全メンバーにこんなメールを出した。

 「○○部を任されることになった××です。皆さんは、私のことをほとんどご存じないと思います。ですから、不安や疑問をたくさん抱えていることでしょう。できるだけ早く全員で顔合わせができるようキックオフミーティングをしますが、現時点では大きく何かを変えることはないので、落ち着いて日々の仕事に取り組んでください。動揺している人も多いかもしれないので、取り急ぎメールを出しました。何か疑問や不安、困ったことがあれば、私に何でも言ってきてください。メールでも直接捕まえてでも構いません。これからどうぞよろしくお願いします」

 これを読んだ若手たちが「ああ、怖そうな人じゃなくてよかった」「話しやすい感じがする人だったね」とランチタイムに話題にしているのをたまたま耳にした私は、新任マネージャーにそっと伝えた。

 「昨日のメール、若手がとてもうれしかったみたいですよ。不安だったけど少し安心した、というようなことを話していましたから」というと、彼女は心底ホッとした表情を浮かべ、こう言った。

 「ああ、よかった。メールを出すかどうか迷ったのよ。本来ならFace to Faceで話すべきだと思ったのだけれど、今、全体的に多忙な時期で、大勢が集まる機会を待っていたら、皆の動揺が広まるばかりかなあと懸念したから、メールで第一声だけでも発しておこうと思って。でも出した後、『あれでよかったのだろうか。気持ちは伝わるだろうか。余計に混乱させたりしないだろうか』とずっと心配だったの。メンバーが安心したというのを聞いて、ホッとした」

 若いメンバー中心の新しい組織なため、誰もマネージャーである彼女に直接はフィードバックしないであろうと思ったので、年齢が近い私が若手メンバーの反応を彼女に伝えたのだが、これが新任マネージャーにとっての安心材料になったようである。

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