しかし数年後、この会社の商品は陳腐化し、誰も目標を達成できる人間はいなくなった。あとに続く商品はない。
当然である。リスクの高い試みに誰も手を出そうとしなかったからだ。目標達成できなければ、社員として会社での立場はなかった。
経営者は、「リスクの高い新規事業はオレがつくる」とひとりで息巻いていたが、それもかなわず、この会社は事業規模を縮小せざるを得なかった。
もちろん、目標達成が本人の努力の証であることは、疑う余地はない。しかし、毎回のように目標達成をしている人間がいたら、毎年のように目標達成している組織があったら、その働き方をうたがってみるべきだ。
なぜなら「失敗できない」という状況ほど、人間を保守的たらしめることはないからだ。
『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)で有名な、ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンが指摘するように、大企業のなかからイノベーションが起きにくい理由は、まさに「失敗を避ける」からであり、サラリーマンが受ける人事評価にとって失敗が致命的であるからなのだ。
すなわち、無難に目標達成をしていたほうが評価が良いから、イノベーションが起きにくい、と言い換えることもできる。
チャレンジの必要な目標に対して、成果を出せるかどうかは、確率の問題であり、長期的なチャレンジを続けたものだけが成果を出すことができる。
それ以外は「偽の成果」と言っても良い。
(つづく)
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