ここで、Ajaxなどの新しい(価値を再発見されたと言った方がよいかもしれない)テクノロジーが、サーバ中心型コンピューティングにおけるユーザーエクスペリエンスを大きく改善していることも見逃せない。サーバ中心型のシステム構築における大きな課題であったユーザーエクスペリエンス(特に、オフィス系アプリケーションなどのユーザーとの頻繁な対話が必要とされるアプリケーションにおけるユーザーエクスペリエンス)上の課題が解決される可能性が出てきたのである。
さらに、疎結合型のアプリケーション連携という動向もある。従来型の企業コンピューティングの世界では、データベース共用や分散トランザクションなどの密結合型のアプリケーション連係が指向されることが多かった。このような方式はデータの整合性確保の点では有利だが柔軟性を欠き、組織をまたがったアプリケーション連係には適していない。
このような問題を解決できる疎結合型アプリケーション連係手法のひとつがSOAである。Web 2.0の世界で語られることが多いマッシュアップという手法も疎結合型の(SOAよりもさらに疎な)アプリケーション連係方式と考えることもできる。
前回も書いたように、従来型の企業コンピューティングの世界においても、Web 2.0的な自由な情報共有の考え方を取り入れていくことで大きなメリットを得ることができるだろう。そのためには、P2P的なコラボレーションの価値やロングテールのようなかつては軽視されていたマイナーな情報、コンテンツの有効活用を考えることが重要だ。
しかし、インフラストラクチャという立場から言えば、それほど大きな発想の転換は必要とされないだろう。サーバ中心型のWebコンピューティング、リッチクライアント、SOAに代表される疎結合型のアプリケーション連係など、最近の重要なインフラストラクチャの動向はすべてWeb 2.0的な世界を実現するための動きと同じ方向のベクトルである。
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