2007年にリリースラッシュを迎えるMicrosoftの統合コミュニケーション製品(2/2 ページ)

» 2006年10月25日 07時00分 公開
[Rob Horwitz,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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音声通信のサポートを追加したExchange Server 2007

 広く使われているMicrosoftの電子メール製品Exchange Serverは、Exchange Server 2007において、音声通信および電子メールの音声による操作を実現する新しい統合メッセージング機能を引っさげて、統合コミュニケーションの世界に足を踏み入れることになる。具体的には、Exchange 2007は組織の既存の構内交換機(PBX)のインタフェースとなり、ユーザーのボイスメールや受信FAXを電子メールと同じ受信トレイに配信できるようになる見込みだ。また、Exchange 2007では、この統合受信トレイ(予定表、連絡先リスト、企業ディレクトリが含まれる)にPCやWebクライアント、電子メールクライアントからもアクセスできるだけでなく、標準の電話からの音声指示によるアクセスも可能になる。これまでのバージョンのExchangeで統合受信トレイや電話アクセス機能を実現するには、Avayaなどサードパーティベンダによるソリューションを追加で導入する必要があった。

 統合受信トレイは、ユーザーが受信メッセージを確認する場所を削減できるほか、メッセージの優先順位を付けたり整理するうえでも便利だ。また、MicrosoftがOutlook Voice Accessと呼ぶ機能で、標準の電話システムを通じて音声指示により電子メールメッセージや個人の予定表の参照、またはその情報の“読み上げ”といった操作が可能なことは、旅先でPCを直接操作できない場合や、PDA(携帯情報端末)などのモバイル機器を操作していて両手がふさがっている場合などに特に役に立つだろう。

 企業ITの観点では、Exchange 2007の統合メッセージング機能を利用すれば、電子メール、ボイスメール、受信FAXサービスを単一のシステムに統合できるため、運用時の保守費用を確実に削減できる。例えば、新入社員のプロビジョニングは、ボイスメールディレクトリを分けて管理する必要がないため、容易になる。また、すべての種類のメッセージにセキュリティ、メッセージの保管、バックアップについて共通のポリシーを実際に適用しやすくもなるだろう。現在ボイスメールシステムを支社ごとに設置している場合は、さらに統合により得られるメリットは大きい。ただし、Exchangeの電子メール機能は成熟しており、信頼性の面で高い評価を得ているが、新しい音声機能の評価は今後にゆだねられている。

統合受信トレイでのボイスメールおよびFAXメッセージの処理

 ボイスメールメッセージシステムからExchange 2007に移行しても、Exchange 2007とこれが置き換える標準のボイスメールシステムとの違いはユーザーには感じられないだろう。呼び出し側ユーザーは、社内ディレクトリでユーザーを検索したり、社員に電話をかけたり(メッセージを残したり)できる。

 Exchange 2007システムに受信トレイがある場合、ボイスメールメッセージは音声ファイルが添付された電子メールと同じように処理される。ボイスメールが社内から発信されている場合は、ボイスメールを送ったユーザーの名前がメッセージの“差出人(From)”フィールドに表示される。社外から送られたボイスメールについては、差出人ID情報が電話番号しかわからない場合、Exchangeは社内のActive Directoryや受信ユーザーの連絡先リストで逆引き参照を行い、差出人の氏名の特定を試みる。

 ボイスメールメッセージは、インタフェースやデバイスの種類を問わずに再生できる。PCからOutlook 2003または2007、またはOutlook Web Access(OWA)2007にアクセスするブラウザベースのクライアントを使用して再生することも、Microsoft Exchange ActiveSyncに対応しているモバイルデバイス(Windows Mobile搭載SmartphoneやPDAなど)や標準の電話を使用して再生することもできる。Outlook 2007またはOWA 2007を使用していて、PCにスピーカーが接続されていない場合や、より厳しくプライバシーを確保する必要がある場合は、特定の番号の電話にメッセージを転送してメッセージを再生することができる。

 電子メールと同様に、ボイスメールもフォルダを使用した仕訳やルールの適用が可能だ。Exchangeでは、ボイスメールの音声がテキストに変換されないため、電子メールとは異なりボイスメールの内容を検索することはできない。ただし、Outlook 2007またはOWA 2007を使用している場合は、手動でボイスメールにメモを追加できるため、このメモに対して検索を実行できる。

 Exchange 2007は、ユーザーが固有のFAX番号を持つ場合、FAXをユーザーに自動的にルートできる。部門やグループ内で同じFAX番号を共有している場合に適切なルーティングを行うには、ユーザーによる操作が必要だ(この場合は、Exchange 2007のFAXルーティングアシスタントユーティリティを利用できる)。FAXは画像として扱われる。サードパーティのFAXソフトウェア製品の中には、受信したFAXメッセージに対してOCR(光学式文字認識)処理を実行できる製品もあるが、Exchange 2007では実現されていない。また、OfficeおよびWindowsはFAX送信機能を備えているが、Exchange 2007ではFAXの送信がサポートされない見込みだ。

電話からの統合受信トレイへのアクセス

 Exchange 2007では、電話からExchange 2007システムにアクセスし、電話機のボタンや音声による操作で統合受信トレイや個人の予定表を参照できる予定だ。また、Speech Serverから引き継いだテキストの音声変換機能により、電子メールのヘッダー情報(受信日時、差出人、件名など)、電子メールの本文(添付ファイルは不可)、受信した会議出席依頼、既にユーザーの予定表に組み込まれている予定の詳細などの読み上げも可能だ。

 メッセージの読み上げ以外にも、電話機のボタン操作や音声による指示により、会議出席依頼の承諾または辞退、電子メールやボイスメールメッセージの削除、スケジュール管理など、さまざまな作業を実行できる。例えば電話からExchangeシステムにアクセスし、次の会議に15分遅れる旨の通知や、会議への参加取りやめ、ある時間のスケジュールの解放などの処理を指示できる。Exchangeシステムはこれを受けて、変更を通知する電子メールを関係者全員に自動的に送信する。

Exchange 2007のリリース予定

 2006年7月末にMicrosoft Exchange Server 2007のβ2がリリースされた。正式版のリリースは2006年末か2007年の初めに予定されている。Exchange Server 2007はx86-64版のみで、32ビット版は提供されない予定だ。

 また、Exchange Server 2007のリリース時の多言語サポートは限られており、例えば音声指示を処理する自動音声認識モジュールは英語版のみの提供となる見込みだ。現時点では、サポートされる言語やサポートの時期についての発表はない。ただし、リリース時点では、標準の音声案内(“暗証番号を入力してください”など)や、“読み上げ”のサポートに必要なテキストの音声変換機能などは、オランダ語、英語(オーストラリア)、英語(英国)、英語(米国)、フランス語(カナダ)、フランス語(フランス)、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、標準中国語(PRC)、標準中国語(ROC)、ポルトガル語(ブラジル)、スペイン語(メキシコ)、スペイン語(スペイン)、スウェーデン語の16言語に対応する。

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