涙あふれる 管理者デビューした“あの日”女性システム管理者の憂鬱(4/4 ページ)

» 2006年12月18日 08時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]
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クライアントからは応答がない

 その××支店をクリックしてみると、やはり応答がない。クライアントからは電子メールもインターネットも使用可能で××支店だけが応答しない状態だった。どうしよう。手のひらに汗がにじんでくる。隣では総務担当が「やっぱりこの新人は駄目なんじゃないか」と探るような目つきで様子をうかがっている。心臓がバクバクいっているのが分かる。遠のく意識を必死にたぐりよせ、もう一度状況を整理してみた。

 今使えるのは2台のファイルサーバだ。そうだ、もう1台の接続を確認しよう。そこで、もう1台のサーバ上でネットワーク共有されているフォルダを特定すると、総務担当のPCから接続を試みた。つながる。それならば、この2台の設定の違いを比較しよう。

 同じWindows NT Serverのネットワーク設定を確認すると、WINSの設定が微妙に違っている。もちろんどれが正しいWINSサーバのアドレスかもわたしには分からない。しかし、片方は正しく動作していて、もう片方は動作していない、ここはいちかばちか設定変更を行うしかないだろう。再起動のチャンスは一回のみ。なぜならAdministratorのパスワードも分からないのだから。

 WINSサーバのIPアドレスを修正した後、OS再起動の確認画面で、「はい」をクリックしようとしたわたしの右手は信じられないくらい震えていた。OSが再起動するまでの時間が数時間にも感じられた。しばらくすると見覚えのあるログイン画面が表示され、ユーザー名にAdministratorが表示されている。パスワードに何も入れずにログインしてみたが、当然のようにはじかれた。もうこのサーバを操作することは不可能なのだ。覚悟を決めて、総務担当に××支店の接続を確認してもらうよう告げた。

総務担当:「おお、つながった。ありがとう。ご苦労様」

 とりあえずAさんの机にやっと自分のかばんを置くと、ほっとして涙がじんわりとあふれてきた。数時間後、出社してきたAさんにそのトラブルを告げると、これまで一度もないトラブルだと言われ、ついに原因もわからずじまいだった。

 あのシステム管理者としてデビューした日以来、サーバのリプレイス、レイアウト変更、停電対応とさまざまなイベントが持ち上がるたびに「どんなささいなイベントであろうとも、きっと誰も経験したこともないような大変なトラブルが起こるだろう」と身構えるようになった。配属の初日、ドメインにまだアカウントもないうちから、サーバのトラブル対応をする羽目に陥った、このわたしが担当するのだ。何も起きないわけがないではないか。

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